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得意不得意

マジシャンのプロフィールにおいて、最も一般的なフレーズ…
「クロースアップからイリュージョンまで…」(本来は、あらゆる分野
が得意であるという差別化のためのアピールなのでしょうが、ここまで
ポピュラーになってしまうとどうなんでしょう)
 
普段はクロースアップのみを演じているマジシャンが、思いがけなく大き
なパーティーのステージを引き受けて、イリュージョンをリクエストされ
て付け焼き刃で演じたとして、ウケるかどうかはともかく事情を知らない
観客からすれば、それは得意だから演じていると思うのは当然でしょう。
 
私もギャラを頂戴しながらクロースアップもイリュージョンも演じてきた
わけですが、思惑とは別に、それが得意だからこそ演じていると思われて
いるはずです。(思惑とは…稽古した演目を試演したり、初めて飛ばす鳥
をデビューさせたり、最近入手した道具をどうしても使ってみたいとか…
時にはそんなこともちょいちょい企みながらやっているわけです)
 
多種多様なビジネスの中で、得意と思っているからこそマジックに関わっ
ているわけで、子供の頃から「特技はマジック」と宣言して憚らなかった
自分が、改めて得意なマジックと不得意なマジックは何?と問われたら…
答えに窮してしまいます。
じっくりと自分と向き合い、各分野のエキスパート達の十八番とも云える
演技を思い出すと、実は自分はほとんどのマジックが不得意なのではない
かとすら思えてしまいます。(本当に凄い演技に遭遇すると、その分野に
関しては得意なんて言うのがおこがましく感じます)
 
私の場合、マジック以外のことでも、PCはこの考察をアップする程度が
やっとだし、スマホすら使いこなせない己の無能さを自覚しているために、
不得意な分野はその道のプロに任せた方が絶対に得策なのを理解した上で
アウトソーシング(HPの制作はそのセンスのある人に、確定申告は顧問
税理士に等々)しているわけです。
 
信頼に足る人に任せることで上手く行く仕事は思っている以上に多くある
はずで、何にでも中途半端な知識がある社長が、経費削減が理由なのか、
あらゆる部署に口出しする会社は伸びないと云われる所以です。
 
他人のマジックを見て焦った結果、無理をして新たなマジックを学ぶより
も、プロとして高い成果を成し遂げるには、強みを最大限に活かすことが
必要だと思えてなりません。(特に若い頃は、上手い人の演技を見ると、
あれもやらなきゃ、これもできなきゃと焦るんですよね)
 
現実のマジック業界で生きて行く厳しさを理解できない世間知らずだった
高校生の頃、営業出演はもちろん、飲み屋経営・ネタ販売・講習会…それ
こそマジックに関するありとあらゆる商売をやっていた某ローカルプロの
名刺に「マジックに関することなら何でもご相談ください」と印刷してあ
るのを見て、(失礼ながら)専門性を排除した生き方に節操の無さを感じ、
「あぁ、この人に相談しても自分が求めている答えは出て来ないだろうな、
いっそ稼ぎなんて度外視し、自分の最も得意な分野に特化した上で『これ
に関しては誰にも負けないから俺に聞け!』っていう気概があればカッコ
いいのに…」と思った記憶があります。
 
どんな業界でも、そこそこ何でもこなせるジェネラリストの方が間口も広
いし、仕事に恵まれるのかもしれませんが、昨今のご時世ではキャラの立
つ何らかのスペシャリストの方が重宝されることも多いはず。
 
つまりプロマジシャンならば、自分のレパートリーの中で100点を越える
ものが収入源になるのであって、30点の部分を60点にしても効果は無く
100点の部分を150点に高める方が勝機が見えてきます。
 
あのピーター・ドラッガーの言葉です…「無能な人物を並みレベルに教育
するよりも、一流の人物を超一流にする方が少ないエネルギーで済む」
 
確かに服や腕時計を購入する際に、お店の担当の方が商品を愛して実に楽
しそうに接客し、きめ細やかなサービスをしている一流店に限って、最初
からそれができる人物を採用している感じがするし、最小限の教育を施す
方が、会社としても時間とコストを削減できるのではないでしょうか。
 
マジックにおいても不得意な部分を削ぎ落として、得意分野にエネルギー
を傾注した方が得策なのでしょうね。
 
プロ野球選手であれば、野手はホームランやヒットの本数で年俸が決まる
のであって、決して三振の数ではないのですから…。

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