本当の動機は?
当お知らせも5年目を迎えました。
私は、日々の細かな出来事や食事内容を写真貼付でアップする等の所謂
ブログを書くつもりはなく、単にお知らせと趣味の時計、そして自身の
体験を基にした考察を中心に書いてきました。
ただ私は、他人に正義を問うような器でもなければ人格者でもないので、
書く内容によっては共感を得る一方で、逆もあることを自覚しています。
しかし、疑問に感じた事象をここで問題提起したり正義を問うのも有り
だし、マジシャンとしての邪や欲の部分をさらけ出すのも有りだと思っ
ているし、その方が稚拙な文章であっても興味深い内容になるのではな
いかと…。(日々の行動や食事内容をさらけ出すことの方が私には抵抗
があるし、私が何を食べたかなんて誰も興味ないでしょうしね)
現に、マジシャンならば多少は思い当たるフシがありながらも、あまり
吐露できないエキセントリックな内容の方が興味を持って読んで頂ける
ようです。
ところで今回の考察も少々エキセントリックなのですが…プロ・アマを
問わず、現在マジックをやっている方々は、何がきっかけでマジックを
始めて、演じた時に何を感じてこの世界にハマッていったのでしょう?
きっかけは「モテたい」とか「目立ちたい」程度だったとしても、現在
はどのような動機で続けているのか…「お客様の笑顔のため」と優等生
的な答えをするマジシャンもいますが、これって政治家が「国民のため
天下国家のために政治をやっているのであって、私利私欲は全くありま
せん」というのと共通した胡散臭いテイスト(きれいごと)を感じるの
は私だけでしょうか?
極端な例では、選挙の時には「勝たせて下さい!助けて下さい!」と
極端な例では、選挙の時には「勝たせて下さい!助けて下さい!」と
土下座までする候補者がいますが、土下座や号泣までして国民のために
働きたいのでしょうか?
昔のことですが、あるマジックサークルの活動の様子がテレビで紹介さ
れた際に、インタビューを受けたアマチュアのおじさんが「お客様の喜
ぶ顔が見たい!…その一心でマジックを続けています!」と言っている
のを見て「なんじゃそりゃ!あんたが一番喜んでいるじゃないか!」と
突っ込んでしまいました。
生まれついての聖人君子じゃあるまいし、一般人には高額に感じる道具
やイリュージョンを、他人様の笑顔のためにカタログとにらめっこしな
がら買い揃える人もいないでしょうし、自身の進歩のためならともかく
観客の笑顔のためだけに赤字覚悟のライヴを敢行するお人好しのプロも
いないでしょう。
それまでにつぎ込んだマジック用品代やライヴの費用を現金で寄付した
方がよほど喜ばれるかも知れません。
コンテストに挑戦するのも自分のためであって、まさかまさかお客様の
ためではないでしょう。
先のロンドンオリンピックにおける多くの選手の発言について、格闘家
の小川直也氏が次のように喝破していました。
「オレにはどうしても納得できないことがある。負けた選手が皆『期待
してくれた方に申し訳ない』ってコメントするんだよな。何で謝ってる
んだろう?『完敗でした、出直します』でいいよ。誰のために五輪に出
ているんだろう?少なくともオレは自分のために出たよ。内村航平君も
絶対に『自分のため』にやったはずだ。今の代表は『いい子ちゃん』
ばっかりてことなのかな…。」
マジシャンの場合は、初期に味わった徐々に技法が上手くなるといった
達成感や、友人や家族を驚かせた優越感こそが、その後の燃え盛る情熱
の導火線となっていったのが正直なところではないでしょうか?
煩悩多くして器も小さく欲深い私の場合も、マジックを始めたきっかけ
は決して観客の笑顔とか、まして夢を見せるとかの高尚な大義名分など
ではなかったし、観客が無関心で全くウケなくても、演じている自分が
幸せになりたくて続けられて来たような気がします。
現時点で、楽しくて幸せであるというゴールに到達していないからこそ
まだ続けているのでしょう。(そう言えば最近読んだ本にこんなことが
書いてありました…ブログ等でわざわざ自分は幸せだ、楽しい日々だと
言う人は、実はコンプレックスだらけで不安な日々だからこそ、自分に
楽しいとかこれが幸せなんだと言い聞かせているに過ぎない…)
私の場合、残された人生の大半のエネルギーを、他人様の喜びのために
費やす余裕はとてもありませんので、マジックの仕事を通して自己実現
を模索しながら、あくまでもその過程で自分の予想以上にお客様に喜ん
でもらえたら充分なのです。
世の中には、本人が望んでいなくても嫌々ながらやり続けなくてはなら
ない仕事もあるでしょう。
ない仕事もあるでしょう。
そしてやり続けるうちに生き甲斐に変わっていくこともあるでしょう。
しかしマジックの場合は、ほとんどの人が強制されることなく勝手に好
きで始めた趣味でのスタートだったはず…それを通して、アマチュアな
らば趣味としての王道を貫く、プロならば報われる収入や名声を得て、
自己実現を目指すのが、人間としての生物学的本能のはずです。
自己実現の欲を否定しながら「お客様の笑顔のため」とか何かと言えば
「感謝感謝です」とのたまうマジシャンほどイリュージョンでキメた時
にはドヤ顔になって感謝なんてしていないどころか、自己陶酔して鳥肌
が立っているに違いありません。
もしもその時、観客が笑顔になっているとしたら…そのドヤ顔が面白か
ったからかも知れません。手段はともかく、笑顔にさせる目的を果たし
ているという観点からはグッジョブですが…。
我欲だらけの本心や粗暴さを糊塗して人格者を気取っても、お里が知れ
るというか、それまでの行動や発言から糖衣を剥がした錠剤のように、
苦い正体は分かってくるもの。
まず青臭い理念を語るよりも、マジックをやる動機はアマチュアならば
「自分が気持ちがいいから」、プロならば「好きなことで稼げることが
幸せだから」と堂々と言える人の方が、はるかに人間臭くて信用できる
と思います。
昨年亡くなった大女優の森光子さんが、あるドキュメント番組で「これ
ほどまでに『放浪記』を続けているモチベーションは何ですか?」と
いう質問に対して「自分のためですね」ときっぱり答えていました。
さらに…「十年前だったら、ファンのためってカッコいいことを言った
かも知れないけど、今は自分のためだって言いきります」…これは真実
でしょう。
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