プロ・アマ論 3
ある老人保健施設の施設長をやっていた人の著作の中に、次の様な文章
を見つけました。
地域のボランティアの方々が、歌や踊りや手品を披露してくれるという
ので喜んで受け入れたところ、入居者達は半ば強制的に舞台の前に連れ
て行かれ、無理矢理に素人芸を1時間以上も見なければならなくなった。
30分もすれば飽きてしまい、多くは居室に戻ってしまった。
認知症の入居者が多いとはいっても、まだまだいいものと悪いものとの
区別はつくし、入居者にとっては「うれしそうにしなければならない」
「ニコニコして感謝しなければならない」ことを強いられているも同然
である。
そういった趣味の延長線上にあるような芸をボランティア活動にすると
いうのは、発表する側の自己満足に過ぎず、人に感動を与えるためには
やはりプロの芸でないとダメだと知った。
ボランティア活動というのは無料でやっているから、多少下手でも喜ぶ
はずだという考えならば失礼な話である。
一方、プロの演歌歌手やプロの落語家が被災地へ赴いて無料でやるので
あれば、喜んで受け入れることだろう。
つまりボランティアで何かしようとするならば、本来なら相手がお金を
払うくらいの能力や才能を持っていなければ、本当に喜んでもらうのは
難しいということ。
老後に何か役立ちたいと思うなら、趣味の演芸などよりも、自分がそれ
まで社会で使って来た能力(たとえば大工さんなら施設の修理を、床屋
さんなら入居者の散髪を…など)を無料で提供する活動をするべきでは
ないだろうか…。
いやあ辛辣な文章ですが、アマチュアで無料なんだからこの程度でいい
だろうという甘えは、プロの立場でも他山の石とするべきでしょう。
ブランド店のノベルティは言うに及ばず、パンフレットや名刺やホーム
ページでも、無料でさしあげるもの、あるいは無料で見れるものほど
予算を投じてプロに手がけてもらって、しっかり作り込んだものの方が
相手に感動を与えるのですから、生のパフォーマンスとなれば言わずも
がなでしょう。
あと、ちょっと意地の悪い見方かもしれませんが「おふくろの味」とか
「家庭の味」でアピールしている飲食店は、早い話がプロじゃないから
美味くなくても許してねって言ってるような気がします。
でも、あえてプロがテクニックを駆使して、わざわざその懐かしい味を
作っているのかもしれないわけだし…う〜ん、プロ・アマ論は難しい。
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