ミュージカル チェアーズ 1
1980年代後半〜2000年代前半、毎年のように、あるいは年に数回は
訪れていたラスベガスから足が遠のいているのは何故なのだろう…と
考えていました。
あの当時、コンベンションに参加したりトップクラスのマジシャン達の
ショーを観て刺激の余韻を残しながら、現地ラスベガス、ロサンゼルス
あるいはニューヨークのイリュージョンビルダーの工房に寄って、新し
い道具を発注して帰国するのがお決まりのコースでした。
もちろん若い頃の自分よりは刺激のハードルは上がっているし、次第に
方向性も決まって行って、地道に鳥の調教にいそしんでいたというのも
遠のいた理由ではあるのですが、やはり自分の中でのラスベガスの魅力
が低下したというのが最大の理由です。
ラスベガスのマジック界を牽引していたシークフリード&ロイやランス
バートンも引退し、その穴を埋めるほどのスターが不在のままでは寂し
い限りです。
たまに観に行きたくなるショーの情報が入っても、あっと言う間に公演
が打ち切りなっていたりして、わざわざ出掛ける気も萎えてしまいます。
また、娯楽が主要産業である街が世界不況の影響をモロにかぶって、街
全体の勢いが衰えていることも否めません。
ネバダ州の失業率は全米最悪の14%を越える状況で、カジノ全体で動く
金額もマカオに抜かれて久しいようです。
そんな折、創刊から20年以上経つ「MAGIC MAGAZINE」の2011年9月
号に気になる記事が掲載されていたことを思い出して、真剣に読み返し
てみました。
MUSICAL Chairs(イス取りゲーム)と題されたSTEVE DALY氏による
寄稿文は、ラスベガスのマジシャン達(特にイリュージョニスト)が
自分の居場所を獲得するためにもがいている現状を克明にレポートした
ものです。
特に興味深いエピソードを抜粋して、ここに紹介しようと思いましたが
全て興味深かったために全文を翻訳したので、何回かに分けてアップ
していきます。
ただし、仕事の合間や機中で流し読みをしながらメモ書きした程度で、
さらに私の英語力不足(正直こちらが問題ですな)もあって、完璧な
翻訳ではないことは御了承下さい。それでは第1回目をどうぞ。
ラスベガスのイス取りゲームへようこそ。
最近のストリップ(ラスベガスのメインストリート)のカジノのショー
ルームでは毎月のように音楽が止まって、マジシャン達のシャッフルが
行われている。
ラスベガスの通りは4.2マイルに渡ってネオンが輝き、ショーガールや
マジシャンがひしめき合っているが、彼等はそう簡単にはイスには座れ
ない。
初期のラスベガスのエンターテイメントは、ネオンやスロットマシンの
ある場所では、常に呼び物とされてきた。
特に1985〜1995年の10年間、ストリップはマジックショーで溢れて
いた。マジックが最も熱かった時代である。
ランス・バートン、カービー・バンバーチ、そして31年以上も活躍した
シークフリード&ロイは、ラスベガスのキングオブマジックと言えよう。
ランスがモンテカルロホテルと13年間を100万ドルで契約したように、
長期契約が当然の時代であった。
しかし、そのような長期契約は例外的となり、同じショールームで演じ
続けながらラスベガスに居続けるのは困難な状況となった。
リック・トーマスの例を示そう。
彼のショーはこの15年間、トロピカーナからスターダスト、オーリンズ
からサハラ、そして現在はプラネットハリウッドのサックスシアターと
チェスの駒のようにアップダウンを繰り返している。
さらには9月にオープン予定のリック・トーマスシアターに向けてのリモ
デルのために、リビエラのスプラッシュショールームへの移動が予定され
ている。彼の頻繁な移動は、伝統的なカジノのショーに災いをもたらす
のではないか…と暗示されていたが、決して迷信ではなかった。
彼が去った後、スターダストとサハラが閉鎖されたのである。
「ルクソールがオープンした時のことを覚えているかい?」とトーマス
が聞いて来た。
いくつかの駄作のショーの後、「イマジン アンド ウインズ オブ ゴッド」
が始まった時に、人々は場所が最悪だと言っていた。
トーマスは笑いながら繰り返した。「僕は言い続けている。良いショー
なら当たる。良いショーが必要とされているだけなんだ。」
後にブルーマングループがやって来て、彼の言ったことを証明した。
トーマスのイス取りゲームは、2005年、彼が懸念していたトロピカーナ
の閉鎖決定から始まった。その懸念は、具体的に月単位の契約になった
ことで現実のものとなった。そして彼はスターダストへと移動する。
2006年時点での詳細は不明だが、現在の彼の話ではスターダストへ移動
する際に、2年契約でお願いしたいと通達されたという。
彼は正式な決定事項と理解した。
「このショールームは素晴らしい歴史があり、カジノは多くの人々から
愛されてきたんだ。」リック・トーマスは、長い間イス取りゲームの
プレイヤーとなることを望んできた。
「僕は恵まれてるよ。ベガスに15年もいるんだから。でも今は2ヶ月も
恵まれない人が多いよ。」初夏に移動し、秋にはまた移動した時のこと
に話が及ぶと彼は言った。
「ストレスだよ! 本当にストレスだ! でも悪い事ばかりではないよ。
それにどう対処していくかだよ。変わらずに地に足を着けて行くさ。」
続きは次回。
| 固定リンク
最近のコメント