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鳥の話 22

以前の考察で、鳩の調教については私なりの考え方や方法を詳しく
述べさせていただきました。

私の経験上、鳩を調教した時間とその結果は比例します。
ある意味苦労は報われます。
従って、あんなに調教したのに結果がダメだったなどと愚痴る人は
そんなに調教していないのです。

また、汚れていない美しい鳩を使っているマジシャンの鳥かごや
道具は当然のように清潔で美しく、おそらく自宅の部屋や車内も
同様のはずです。
翻って、糞だらけの鳥かごで鳩を飼っているマジシャンの部屋は
タバコの吸い殻だらけの空き缶までが放置されているものです。
まあ、呼吸器の弱い鳥類のいる部屋や移動の車中で喫煙すること
自体がバードマジックを演じる資格はないのですが…。

話がそれましたが、人間に馴れた鳩は誰が手にしても扱い易く、
マジシャン同士で鳩の貸し借りが常態化している事実からも最も
マジックに適した鳥であることは確かでしょう。

今回は、現在私が演じている大型インコ・オウムについて少しだけ
触れることにします。

一般的にインコ・オウムの調教というのは、言葉を覚えさせて喋ら
せたり、自転車漕ぎ等のサーカス芸をイメージしますが、マジック
における調教というのは出番までおとなしく隠れている、あるいは
観客の頭上を飛行してマジシャンの手元に戻る等を意味します。

そのように育て上げるためにはどうすればいいのでしょうか?
知能が高く感情表現豊かで、ある時は極めて凶暴な大型鳥をショー
で使いこなすために必要なもの…それはズバリ「信頼感」です。

これ重要です。
つまり「信頼感がなければ調教がスタートできない!」ということ。

では信頼感を築くために必要な最大の条件は…常に鳥の視界に入る
場所でできるだけ長く一緒に過ごしてあげることです。
私は研修医時代に無理をして飼ったことがありますが、早朝に出掛
けて夜遅く帰宅してコミュニケーションをとる程度では、なんとか
噛み付かれないように手に乗せる程度がやっという状態でした。

職業プロに転向して、日常生活はもちろん移動する時もずっと一緒
に過ごすようになって、徐々に信頼感が築かれていきました。

例えば、マジックを趣味としているサラリーマンがバードマジック
に憧れて大型鳥を飼ったとしましょう。
当然のように朝出勤して夜帰宅というライフスタイルの中で、その
鳥と最も長時間接しているのは専業主婦の奥さんということになる
でしょう。
そして奥さんをアシスタントにステージに立って、鳥を飛ばしたら
…鳥は間違いなく奥さんの手元に戻って行くことでしょう。

これまで多くの方々から質問を受けましたが、大型鳥を操る本格的
なアクトを完成させるには、「毎日長時間鳥と過ごすことが仕事と
して成立するプロ」にならないと難しいということです。

堅気が勢いで大型鳥を飼ってしまうことだけは避けた方が賢明です。

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