歳を重ねる(前編)
遅ればせながら、東日本大震災で被害に遭われた方々に心から
お見舞い申し上げます。マジックのみならず、イベント関連の
多くが中止となっているようで、一日も早く平穏な日常に戻る
ことを祈っております。
このように日本中が暗いマインドの中で、誕生日を迎えてしまい
ました。今までは知人からプレゼントを頂くことで自らの誕生日
を思い出すほどに無頓着だったのに、今年に限っては、未曾有の
大震災というこの悲劇が起こった時代を生きている事実を顧みて、
命に関る大病をすることもなく、約半世紀も自己実現に向けて歩
むことができた人生に感謝しながら誕生日に想いを馳せました。
初めて自分自身で自分に誕生日プレゼントを買いました。
(自分へご褒美という言い方はちょっと抵抗がありますね)
若い頃はがむしゃらに突っ走っていた人も、人生の折り返し地点を
過ぎた頃から、どのように老いを迎えるかで悩み始めるものです。
スポーツ選手の場合は限界が如実に数字に現れるし、衰えを自覚
できるものですが、マジシャンの場合は定年もなく、やろうと思え
ば結構ダラダラと続けられるもので、続けるのであればどこかの
時点で年齢に合った演技内容に転換するなど、客観的に自分を見る
必要があるでしょう。
マリック氏、マギー司郎氏のお二人は還暦を過ぎておられますが、
マジシャンとしては理想的な歳の重ね方をされていると私は思い
ます。マリック氏は言葉の重みや説得力が増し、マギー氏は増々
枯れた良い味が出ているのではないでしょうか。
歳の重ね方が難しい分野はイリュージョニストで、余程メジャー
でない限り若さやスピードしかウリがなければ、次々にデビュー
するギャラの安い若手に駆逐されるのは想像に難くありません。
(実際にギャラを下げてイリュージョンの数を増やすという売り
込みも日常化していると聞きます)
新陳代謝が活発な海外のマジック業界でも、イリュージョニストの
入れ替わりは特に激しいようです。
そもそも若い頃は、体力と気力はあるのに高額なイリュージョンを
入手する金銭的な余裕が無く、金銭的に余裕が出て来た頃には体力
が衰え始めるという理不尽な側面もあり、若くしてイリュージョン
をメインにするには、マジシャンの家庭に生まれるか、自分自身で
ひたすら手作りするか、スポンサーを見つけるか、支援してくれる
先輩に恵まれるなどするしかありません。
体力的に今しかやれない、あるいは今の年齢でないと似合わないと
いうイリュージョンもあるわけで、それは将来において後悔しない
ようにやっておくべきだと思うし、後輩達にはそうアドバイスし、
情報や知識や金銭的にも援助をしてきました。
最近は格安のバッタ物が輸入されているようですが、そんな道具を
選択するという貧しい心を持ちながら良いショーが提供できるかは
甚だ疑問だし、バッタ物のブランド品を身に着けてクロースアップ
マジックを演じているマジシャンがいるとしたら、マジックのタネ
がばれるよりもそちらがばれることの方が惨めだと思います。
続きは次回…。
| 固定リンク
「マジック」カテゴリの記事
- 相応しい現場を選ぶ(2024.11.16)
- 都内でショー(2024.10.04)
- 舐められるんだよなあ(2024.08.30)
- 持ち家派? 賃貸派? 3(2024.06.01)
- 持ち家派? 賃貸派? 2(2024.05.23)
最近のコメント