再放送のお知らせ
BS日テレ開局10周年記念特別番組
「人類最古のエンターテインメント! マジック4000年の歴史」
放送日時:2011年4月24日 14:00〜15:54
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今回の考察の前編では、マジシャンとしての、特に体育会系で体力
勝負の側面が強いイリュージョニストの歳の重ね方は難しいのでは
ないかということを述べました。
今回はその後編です。
歳を重ねていることを客観視していないと、次第に演技内容やBGM
や衣装の雰囲気とのズレが生じます。
年配の男女ペア(あくまで一部の)のイリュージョンショーに痛々
しさすら感じることもあり、これは止め時を逸しているのかなとも
思います。(いい大人になった歌手が、アイドル時代のデビュー曲
や衣装のままステージに立っている…という違和感のようなもので
しょうか)
あのカパーフィールドでさえ40代後半からは、特定の美女と演じる
イリュージョンは控えて、自分自身をアピールして印象に残る出し物
にシフトしています。これは実に先見の明がある戦略でしょう。
ショー終了後に、豪華な道具と美女しか印象に残らないマジシャンは
おおいに参考にすべきです。
マギー司郎氏が若い頃、次々に持ち歩く道具が増えていき、この調子
では歳をとった時に運べなくなると感じ、将来を見越した上で現在の
おしゃべりマジックに切り替えていったという話には説得力がありま
した。
現在の私はというと、BGMに乗って女性アシスタントと演じるタイプ
のイリュージョンは基本的に封印しています。
しかし、この手の出し物は昔から好きだし営業的には実に売りやすい
のですが、道具が優秀であれば誰が演じてもある程度はウケてしまう
傾向には内心忸怩たるものがあったし(実際にタレントに指導すれば
短期間でマスターして、ちょっとしたプロマジシャンよりも上手く演
じる場合もあるほどです)、年齢的にも少し合わなくなってきている
のかなと…。それと以前から軽度の頸椎ヘルニアを患い、重い機材を
運んだり組立てたりした後に、左手が痺れるようになったのも理由の
一つです。
封印するまでは漠然とした不安(派手なイリュージョンをやらないと
手抜きをしたと思われる恐れと、戦場に丸腰で向かうような不安感)
があったのですが、一度封印して、バードマジックやトークマジック
だけで構成すると自分自身が前面に出せるし、現在はより個性豊かな
ショーができるようになったと確信しています。
長い期間をかけて積み上げてきた記憶や経験を「結晶性能力」と言い
ます。つまり「経験値」とも言えます。
結晶性能力でウケる…歳を重ねたマジシャンのゴールはここしかない
ような気がします。
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遅ればせながら、東日本大震災で被害に遭われた方々に心から
お見舞い申し上げます。マジックのみならず、イベント関連の
多くが中止となっているようで、一日も早く平穏な日常に戻る
ことを祈っております。
このように日本中が暗いマインドの中で、誕生日を迎えてしまい
ました。今までは知人からプレゼントを頂くことで自らの誕生日
を思い出すほどに無頓着だったのに、今年に限っては、未曾有の
大震災というこの悲劇が起こった時代を生きている事実を顧みて、
命に関る大病をすることもなく、約半世紀も自己実現に向けて歩
むことができた人生に感謝しながら誕生日に想いを馳せました。
初めて自分自身で自分に誕生日プレゼントを買いました。
(自分へご褒美という言い方はちょっと抵抗がありますね)
若い頃はがむしゃらに突っ走っていた人も、人生の折り返し地点を
過ぎた頃から、どのように老いを迎えるかで悩み始めるものです。
スポーツ選手の場合は限界が如実に数字に現れるし、衰えを自覚
できるものですが、マジシャンの場合は定年もなく、やろうと思え
ば結構ダラダラと続けられるもので、続けるのであればどこかの
時点で年齢に合った演技内容に転換するなど、客観的に自分を見る
必要があるでしょう。
マリック氏、マギー司郎氏のお二人は還暦を過ぎておられますが、
マジシャンとしては理想的な歳の重ね方をされていると私は思い
ます。マリック氏は言葉の重みや説得力が増し、マギー氏は増々
枯れた良い味が出ているのではないでしょうか。
歳の重ね方が難しい分野はイリュージョニストで、余程メジャー
でない限り若さやスピードしかウリがなければ、次々にデビュー
するギャラの安い若手に駆逐されるのは想像に難くありません。
(実際にギャラを下げてイリュージョンの数を増やすという売り
込みも日常化していると聞きます)
新陳代謝が活発な海外のマジック業界でも、イリュージョニストの
入れ替わりは特に激しいようです。
そもそも若い頃は、体力と気力はあるのに高額なイリュージョンを
入手する金銭的な余裕が無く、金銭的に余裕が出て来た頃には体力
が衰え始めるという理不尽な側面もあり、若くしてイリュージョン
をメインにするには、マジシャンの家庭に生まれるか、自分自身で
ひたすら手作りするか、スポンサーを見つけるか、支援してくれる
先輩に恵まれるなどするしかありません。
体力的に今しかやれない、あるいは今の年齢でないと似合わないと
いうイリュージョンもあるわけで、それは将来において後悔しない
ようにやっておくべきだと思うし、後輩達にはそうアドバイスし、
情報や知識や金銭的にも援助をしてきました。
最近は格安のバッタ物が輸入されているようですが、そんな道具を
選択するという貧しい心を持ちながら良いショーが提供できるかは
甚だ疑問だし、バッタ物のブランド品を身に着けてクロースアップ
マジックを演じているマジシャンがいるとしたら、マジックのタネ
がばれるよりもそちらがばれることの方が惨めだと思います。
続きは次回…。
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