ミスを考える
人間が行うことには何事にも、もちろんマジックにも(特にかも)ミスは
つきものです。
マジックの様々な分野の中で、仕掛けに頼らず、あえて困難な技法で
現象を起こすスライハンドが最も好きなマジシャンは、他力本願なしで
キマッた時の達成感がたまらないからでしょう。(どや顔注意!)
しかし時間をかけて苦労して身に付けた技術なのだという自負心がある
だけに、技術的な難しさと観客の反応は必ずしも比例しないことを理解
できているとしても、その現象の効果を過信する傾向があります。
また過信しているだけに、ミスッた時の落ち込みもひとしおです。
以前の考察「発表会を観て」でも述べましたが、注意しておくべきことは
ショーがウケなかったり、コンテストで入賞できなかった時に「あのミス
さえなければ…」と原因を結論づけてしまう傾向があることです。
はたしてそのミスさえなければ、拍手喝采や入賞することができたので
しょうか?
ミスがなかったのにウケなかった…この厳しい現実を体感するためにも
絶対にミスをしてはいけない大切な舞台もあるわけです。
ウケない理由をいつも些細なミスや観客のせいにしていると、全体的な
問題が解決できないままになるからです。
しかし、かく言う私も幾度となく経験してきましたが、特にスライハンド
の場合は納得するまで何度も練習やリハーサルを繰り返して、起こり
得るあらゆるトラブルを想定あるいは体験してからいざ本番に臨んだと
しても、そこでは想像すらしなかったミスをしてしまうものです。
スライハンドに限らず、道具や仕掛けを用いたマジックでも、飽きる
ほどやり慣れている演技なのに、ここ一番の大切なショーやテレビに
出演の時…いつもと違う何かが起こるのです。
その日に限ってケースの中のガラス製の道具が割れていたり、昨日
までは正常に作動していた仕掛けまでもが出番直前にピクリとも動か
なくなったり…それが人間にも伝染して自分が制御不能になるともう
最悪です…ファイヤーネタにライターオイルをいつもより多めに注いで
手まで濡れて焦ったり、トークの場面では何を話しているのか収拾が
つかなくなるやら、ステージ上でつまづくやら…。
完全にミスを防ぐことは不可能ですが、多くは「ミスをしてしまうのでは
ないか」という心理的な部分に起因しているのでしょう。
いわゆる因果応報…起こったことには必ず理由があり、その結果がまた
次の出来事の原因となって事象が繋がっていくという考え方。
心配がミスを呼び寄せるという事象は、まさに因果応報の一つの側面
だと思います。
ミスとは突然現れるものではなく、実は水面下に自分がひた隠しにして
いたことが発覚することの方が多いのです。
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