鳥の話 21
前回の鳥の話20では、多くのインコ・オウムは人物の区別ができること
について述べました。
では鳩はどうなのでしょう? 人物の区別ができると思いますか?
ズバリ、区別できるのです。
実は私はある時までは絶対に区別できるわけがないと信じていました。
私の経験上、馴れた鳩は誰に対しても馴れて扱い易いからこそ頻繁に
マジシャン間で貸し借りされるわけだし、特定の人物に馴れるインコや
オウムは区別がつくからこそ、飼い主以外は容易に扱えないわけです。
1990年代ですが、ドイツのマジックハンズコンベンションでの
エイモス・レフコビッチを観た時に、それまでの常識が覆りました。
レフコビッチといえば過去何度か来日したこともあるベテランで、当代
きってのダブアクターです。
そのテクニックや手順構成を含めたアクトに関しては、好みや評価が
分かれるところですが、こと「鳩の調教」にかけては間違いなく世界一
でしょう。とにかく鬼のように調教しています。
あるテレビ番組で、彼が自宅で取材を受けているのを見たことがありま
すが、庭の広大な鳩舎で約80羽の鳩を飼い、1日に8時間も調教して
いるとのことでした。
演技の最後には客席の後方から6羽の鳩が飛来して彼の肩や腕に
ズラリととまるシーンは印象的で、コンベンションでは必ずスタンディ
ングオベーションとなっていました。
さてドイツでのガラショーに登場した時の話です。
飛んだ1羽の鳩が珍しく手元に戻らずに、ステージの背景のカーテンに
沿ってバタバタと床に落ちました。
ところがその鳩が自ら飛び立ち、彼の手元に戻って行きました。
さらに驚いたのは大会のファイナルでのことです。
その日の出演者全員がステージ上に呼ばれ、一列に並んだ時のこと…
劇場の後方から6羽の鳩が飛来してレフコビッチだけにとまったのです。
彼と同じような黒い燕尾服を着たマジシャンが他にも4〜5人はいたの
にも関らず、全ての鳩が迷うことなく彼をめがけて飛んで行ったのです。
1997年、私はロサンゼルスのワンデーコンベンションに参加しました。
ここでレフコビッチがレクチャーを行いました。
ところがレクチャーの内容は、多くの参加者が期待したような鳩出しの
「テクニックや秘密の公開」ではなく「日頃の飼い方とケア」に関してで
あることを彼自身がレクチャーの冒頭でアナウンスしたために、大部分
の参加者が、なあんだという感じでぞろぞろと部屋を出て行ってしまい、
残ったのは私を含めて10人以下となってしまいました。
鳩出しのテクニック等は資料や映像から勉強することができても、日頃
のケアは知る機会がないので、実はこちらの方がはるかに価値があると
思うのですが…。
レクチャー終了時にドイツでの出来事を思い出したので、彼に疑問点を
尋ねてみました。
彼ははっきりと答えました…「鳩は人物の区別ができるんだ!」
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