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2010年5月

鳥の話 20

一般的に多くの種類のインコやオウムは知能が高く、的確に人物の
区別ができます。
従って家族の中で特定の人にだけ馴れて、他の家族に対しては威嚇や
噛み付きなどの凶暴性を発揮することは珍しくありません。

私のショーでは特に大型鳥を使うために、観客や共演者に危害を加える
ことがないように細心の注意を払って調教しています。
自宅においては来客の腕にとまらせて記念写真を撮ったり、時には来客
自身に投げさせてその腕に戻って来させる等、誰に対してもフレンドリー
に接するように馴らしています。

鳥に限らず、愛玩用のペットの多くは人物の区別はできるものですが、
昔飼っていたコバタン(白色オウム)のケースを紹介します。

私の経験では、コバタンやコキサカなどの比較的小型の白色オウムは
大変臆病で用心深いという印象があります。
強い信頼関係を築いてからショーに登場させようと、時間をかけて毎日の
世話と調教をしていました。
半年以上経ち、そろそろ本番でも使えるかなと判断し、自宅リハーサル
のためにステージ衣装に着替えてケージに近づいた時のことです。
「ギャ〜!ギャ〜!グェ〜!」と、もの凄い雄叫びで怯え始めました。
どうやら、きらびやかで派手な衣装をまとった私を見るのが初めてらしく
相当ビビッているようでした。
他の鳥はどんな衣装で近づこうが全く平気で、顔や雰囲気でしっかりと
私を認識しているのに、この鳥だけは奇抜な衣装であればあるほど私を
天敵のごとく怯える日々が続きました。
(今振り返ると、燕尾服と暴走族の特攻服をミックスしてボタンをずらり
と並べた紫色の時代錯誤的衣装でした)

そういえば毎日毎日当たり前のように、パジャマやトレーナー等の地味
な部屋着で世話や調教をしていたので、すっかりその姿を見慣れていた
のでしょう。
でもまさかその鳥のためにパジャマでステージに立つことはできません。
どうやって解決したかというと…毎日派手なステージ衣装に着替えて、
馴れるまで世話を続けました。

宅配便が届いた際に、衣装のまま受け取る時は恥ずかしいのなんの。

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環境に染まる

マジシャンが演じる環境は様々です。
ホテルの宴会場、劇場、バーやクラブ、テレビスタジオ…。
観客の層も男性ばかりだったり、家族連れが中心だったり…。
それぞれの環境に適応した演目を、的確に選抜して演じることができる
かどうかがプロフェッショナルとしての力量が問われるところです。

ところが自分がやりたい演目に限って、環境にかなりの制限を必要と
することが多いものです。(クロースアップでもステージでも)
私の20代の頃、最もやりたいのはダブアクトだったのですが、コンテスト
用に作った手順のままでは、とても屋外のお祭りのステージでは演じられ
ませんでした。(当時の私の仕事場は、お祭りや周囲を囲まれた屋外の
イベントステージがほとんどでした)
角度には弱いし、鳩は飛んで逃げるおそれはあるし、何より真夏の屋外
ステージでは鳩の生命の危険があります。従って、角度に強い道具を
使って楽な演技へと流されて行きます。(いわゆる営業ズレです)

ここを読んでおられる営業プロの方々ならば、次のようなことを感じたこと
があるのではないでしょうか。
「やりたいマジックは色々あるんだけど、今の自分の仕事場は環境が良く
ないからできないよなあ」
「これ良いマジックなんだけど、今の営業環境でやる機会はほとんどない
なあ」…その良くない環境から抜け出したいのに、カバンの中は環境に
合わせた道具ばかりが増えていく…。

私も若かりし頃、限られた予算でイリュージョンを調達する際に、本当は
やりたいイリュージョンがあるのに、結局はどこでも演じられるバスケット
やブルームサスペンションあたりに落ち着いてしまったり、クロースアップ
では、真面目なカードマジックを演じて酔客に絡まれるのを嫌って、一発
ギャグのマジックにばかり逃げている時代もありました。

気が付くと「どっぷりと環境に染まった自分」がそこにいました。

そこから抜け出そうと思うのならば、「自分が理想とする演技」を作って
から、劇場やテレビのオファーを虎視眈々と窺うしかありません。
チャンスが訪れてから作り始めては間に合いません。
私の大型鳥を使った演技も、鳥を飛ばしたり火気を使用したりと環境が
制限されるために、営業的側面から見ればかなりのハンデがあるので
演じる機会があるのだろうかと危惧していましたが、あえてリクエストする
クライアントも多いものですし、有り難いことにその演技が可能な環境を
わざわざ用意してもらえる場合もあります。

かなり昔の話ですが、地方のお祭りを主な仕事場としているマジシャンが
「劇場のような良い環境を与えられれば、僕も色々と構想があるんですよ」
と言ったことがありました。ほどなくそのマジシャンと劇場で共演する機会
がありましたが…お祭りと全く同じ演技でした。
結局は、しばらくは演じる機会がないことを覚悟してでも演技を作ってしま
わないと、構想だけで終わってしまいます。

ある若手マジシャンが「僕は、自分のショーの背景がエスカレーターという
ショッピングセンターのイベントステージに立つような二流マジシャンにだけ
はなりたくありませんね」と豪語しました。

このゴールデンウィークのことです。
某ショッピングセンターのイベント広告で、彼の自信に満ちた表情の写真
を見かけました…この複雑な気持ちはなんだろう。


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