営業文句
自宅にかかってくる財テク勧誘、マンション購入を勧める電話にうんざり
している方も多いのではないでしょうか。「必ず儲かります」というのなら、
なんで自分がやらないのかと疑問に思うのも当然です。
どんなにセールスしても相手が首を縦に振らない場合に「私を信用して
下さい」と言われると、返って不信感は募るし、「私はプロですからお任
せ下さい」なんて本当のプロは決して言わないものです。
うまく説明できずに逃げ込んだあげくの表現が「信用して」とか「プロ
ですから」というのは完全な敗北宣言です。
本当のプロと云われる人達、例えばプロスポーツの世界で一流の人達
にとっての「プロですから」とは…自分を強く戒める言葉です。
自分を磨いた結果で実証して、初めて周囲が「さすがあの人はプロだ」と
認めるものかもしれません。
翻ってマジシャンの中には「このイリュージョンは私しか持っていません」
なんて営業文句で売り込んでいる人がいるのも事実で、自ら考案したわけ
でもなく、単に売っているだけの道具を買っただけでプロとしてのウリ
にしたり、夢が叶ったなんて本気で思っているとすれば、それは情けない
かぎりです。(コレクターならそれでいいのでしょうが、パフォーマー
ならば、他にウリが無いことを白状しているも同然で、究極の他力本願
と言えましょう。)
他のマジシャンが同じ道具を買えば、そんな営業文句は使えなくなるし、
叶った夢さえはかなく散ってしまいます。
一流の野球選手が「このバットは私しか持っていません」と自慢するで
しょうか。それならそのバットでさっさとホームラン王になればいいのに…
と突っ込まれて終わりでしょう。
マジシャンというエンターティナーである以上、世間に認めてもらうべきは
「道具」ではなく「芸」であり、営業文句にするべきは「自分しか持ってい
ない」ではなく「自分にしかできない」であるべきではないでしょうか。
究極は、自分の代わりはいないというポジションなのでしょう。
カードなんて誰でも買えます。では誰でもふじいあきら氏や内田貴光氏の
ようにカードを扱えるものでしょうか。
スプーンは何処でも買えます。では誰でもMr.マリック氏のように説得力の
あるスプーン曲げができるでしょうか。
私自身「あんなマジック、でかい鳥を飼えば誰でもできるよ」と中傷される
ことの無いように、毎日の世話と噛み付かれながらの調教…
まだまだ切磋琢磨の日々です。
買えばできるではなく、近道の無い、地道な積み重ねの結果で完成する
「芸」こそを「営業文句」にしたいものです。
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