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鳥の話 19

今回は、バードマジックにおける注意点やトラブルについてです。

鳥に限らず動物を使ったマジックは、出現した際のインパクトは人工物
と比較しても強烈です。意外性があればあるほど効果的であることを
考えれば、これから鳥が出るということを観客に悟られるのは極力避け
たいところです。
その観点に立つと、鳩を出すマジシャンがショーの最初から空の鳥カゴ
をステージ上に置いておくというのは、あまり賛成できません。
(私自身、テレビで「怪鳥マジシャン」と紹介されるのは、これから鳥が
出ることをバラされてる点では痛し痒しの面があるのは事実です)

大型鳥の場合、その鳴き声の大きさは一般の方の想像を遥かに超えて
います。私が注意しているのは出番直前に鳥をセットする際に、観客に
鳴き声を聞かれないようにすることです。出番前に鳴き声が聞こえると、
せっかく出現しても「ああ、あれが鳴いてたのか…」と興醒めさせてしま
います。

劇場では通常はステージの裏に控え室があり、頑丈な鉄の扉で仕切ら
れていることが多いので安心なのですが、ホテルの宴会場の場合は結構
大変です。ステージと控え室は遠く離れていることが多く、時にはフロア
が違うこともあります。遠く離れた控え室で鳥を仕込んでエレベーターに
乗ったり狭い導線を延々と運ぶわけにもいかないので、必然的にステージ
横のパテーションの裏で仕込むことになるのですが、このような環境では
極力おとなしい鳥を連れて行きます。

オウムやインコの大型鳥の個性は、同じ種類であっても様々です。
おとなしい仔もいれば、臆病でギャアギャア鳴く仔もいます。
知能が高く記憶力も良いので、仕掛けにセットする際に怖がらせたり怒ら
せたりすると、ずっと根に持ったりトラウマになったりして、以後ショーに
使いづらい鳥になってしまいます。
焦らずに時間をかけてコミュニケーションをとり、信頼感を得てから本番
デビューさせると、優秀なパートナーとなります。

動物マジックにおいて何より優先しなければならないのは、生命の安全
です。仕掛けにセットして何分以内に出せば安全なのか、入念な検証が
必要です。実際の仕事の現場では、セット後に出番が10〜20分遅れる
ことなどしょっちゅうなので、適切な判断が要求されます。
夏と冬では当然のことながら気温も違います。たとえ冬でもステージ上や
テレビのスタジオ照明はかなりの暑さです。
車に残された幼児が熱中症で亡くなるニュースは痛々しいものです。
あるマジシャンのトラブルなのですが、ワゴン車にペンキ塗りたての道具
と一緒に鳩を積んで、現場に着いたら全て死んでいたという話を本人から
聞いたことがあります。時間をかけて調教した動物を失うのは、精神的にも
営業的にも大きなダメージを被ります。

さて、鳥を出現させて拍手を頂いて終わりにするのが一般的なのですが、
さらに飛ばすのはハイリスク・ハイリターンです。
思いがけずハプニング的に鳩が飛んでしまい、食事中のテーブルに墜落
したり、宴会場の高い所にとまってしまい、会場サイドから顰蹙をかった
苦い経験を持つマジシャンも多いのではないでしょうか。
私もこの手の失敗談を話始めたら、枚挙に暇がありません。
天井の低いナイトクラブでコンゴウインコを飛ばして、灰皿の灰を舞い上が
らせたり、1500万円のシャンデリアに翼が擦ったり、宴会場中央の巨大な
氷の彫刻に鳥が激突しそうになったり…全てのトラブルは自己責任です。

で、私のバードマジックにおける最大の事件は…1997年、関西テレビの
生放送中に1羽の鳥が突然飛び立ち、当時カツラを装着していた山本浩之
アナウンサーの頭に…。
その後、山本アナはカツラであったことをカミングアウトし、関西圏では
一躍有名な人気アナとなりました。
以後も何度か関西テレビでご一緒しましたが、いつもその話で盛り上がっ
たことは言うまでもありません。

お互いに、「災い転じて福となす」の典型例でした。

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