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2009年9月

鳥の話 15

以前にも述べましたが、私が大型インコ・オウムを飼い始めた頃は、慣れ
そうな鳥を選べる状況ではありませんでした。
稀少動物保護のワシントン条約の規定が厳しくなる前に輸入された老鳥も
多く、当時飼っていたスカーレットマコウ(3色コンゴウインコ)などは、
10年以上もペットショップで飼われていた鳥で、自分が飛べる動物である
ことさえ忘れているほどでした。
1993年前後は、とにかく素質の良い鳥に出会うために、多くの鳥を飼い
続けました。(仕方なく手放したり不幸にも亡くなってしまったりと、つら
い別れも多く経験しました。)

どんなに調教しても(そもそも調教の仕方が分からなかったのですが)、
飛んで戻って来るどころか、出現させるだけで精一杯で、ショーの度に噛み
付かれてしょっちゅう流血していました。(現在でもテレビ出演の映像を確認
すると指の絆創膏がはっきり確認できることがありますが、これは出番直前
に噛み付かれた証拠です。)

当時は10数分のアクトの中で、鳩6羽、タイハクオウム、ルリコンゴウイ
ンコ、ベニコンゴウインコ、ハルクインコンゴウインコを出していました。
飛ばして戻って来るのはまだ鳩だけでしたが、クライマックスに大型鳥が
立て続けに出現すると、もの凄い歓声が上がります。
こうなると最も注意しなければならない「営業ズレ」の気持ちが生じます。
「出すだけでもこれだけウケるんだから、飛ばさなくてもいいんじゃないか。
墜落して迷惑をかけて仕事が減る危険性もあるし…」と、調教を諦めようと
している自分を正当化してしまうのです。

そんなある日、マリック氏が福岡に来られました。仕事の合間を利用して
私の自宅に遊びに来てくださいました。
以下はマリック氏をバードルームに案内した時の会話です。

マリック氏 「うわぁ! 凄い鳥達だねぇ。こんなのが出て来たらウケる
でしょ?」

私 「もちろん! いつもかなりウケてますよ。」(自慢げに)

マリック氏 「こんな凄い鳥達を出せば誰だってウケるよ。その歓声や拍手
はあなたに対してではなく、鳥に対してだからね。それを忘れたらダメだよ。
単に出すだけではなく、自由自在に操れるようになった時に、観客は初めて
あなたを賞賛するんだよ。」

私 「……。」

確かに出すだけならば、それは超豪華なクス玉に過ぎないのかもしれません。
妥協してグラグラになって落ちかけていた皿回しの皿が、マリック氏の言葉
によって、再び勢いよく回り始めました。

飛ばしたコンゴウインコが初めて戻って来たのは、それから1年後でした…
つづく。

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コーティング再び

7月の豪雨→悪夢の冠水→廃車から50日…ようやく2台目の新車の
コーティングが終了しました。前回は納車後3ヶ月、コーティング後
10日目の悪夢でしたが、冠水後もピカピカの車を見ると、気分はヘコ
みながらも凄いなと思いました。実際複雑な気分でした。

私の気持ちを察して頂けたのか、今回はさらに美しく仕上げてもらった
感がします。1週間に渡る作業工程のため、預ける日程の度重なる変更
や代車の手配等、大変気を遣って頂きました。
私からできるお礼と言えば、それしかありませんね…短い時間でしたが、
クロースアップマジックを楽しんで頂きました。
(さすがにここでは鳥は出せません。)
イズミクリーンの皆様、有難うございました。

ピッカピカの車の写真はこちら

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必要なもの

「手が器用でないとマジシャンにはなれないんでしょ?」…とよく聞かれ
ます。確かにそれに越したことはありませんが、「手」よりも「生き方」が
器用な方が得な気もします。
マジシャンにとって最も必要なものは何でしょう…センス?ルックス?運?
人脈?…意見は様々あることでしょう。
マジシャンという職業は自由業です。自由であるならば、最も必要なのは
「自己管理能力」ではないだろうかと常々感じています。

所属する芸能プロの戦略のもと、アイドルが本来の自分を封印してまで
虚像を演じるのと違い、多くのマジシャンは自分でレパートリーを決め、
選曲し、好みの衣装をまとい、己の言葉で話しているという現実から考え
れば、普段の生き様(コピーならばコピーなりの)がストレートに見えて
しまう職業だと思います。

主な職場が毎日のように通うバーやマジックショップならば、どちらかと
いうとサラリーマンに近いのでしょうが、レギュラー出演もしていないフリー
のマジシャンがショーをせずに何日も自宅で過ごしていると、一般人から
見ると「暇」だと思われます。(実際に暇なのかもしれませんが…)
自由業なので、今日一日を暇にしようと思えばそうなるし、遊びや食事に
誘われやすくなりがちですが、本当の仕事は他人が見ていない時に行わ
れるものです。家に居なければならないから居ることも多いわけです。

アスリートは、その自己管理能力でしっかりとトレーニングを積んで試合
に臨むものです。人目の届かない場所でトレーニングをしているのに、
試合に出ていない時は暇なのだと思われるのは心外でしょう。
試合の結果を見せつけることが、ちゃんと仕事をしていたことの証しです。
マジシャンの場合も、普段の生き様が演技から透けて見えるものです。
観客の前で30分演じるというのは、普段の努力をたった30分で証明しな
ければならないことでもあるのです。
映画に例えると大げさですが、自宅での練習・動物の調教や手順構成作業は
映画の撮影や編集作業であり、ショーそのものは完成した映画を上映して
いるようなものかもしれません。
そう考えるからこそ、良いショーを見せるためには、普段の自分を律する
自己管理能力が最も必要なものだと思えてならないのです。

何度もマリック氏の自宅にお邪魔したことがありますが、氏の自室に入る
度に、ここで魔法が創られているんだなあと感じたものです。(テレビの
収録時間よりもはるかに長い時間ここで働いているはずです。)

自由業の意味をはき違えると、時間にもお金にもルーズな荒んだ生活を
送ることになってしまいます。
強烈な問題意識は、強烈な緊張の中からしか生まれません。
薄汚れたカップから、古くしぼんだレモンがコロッと出て来ると、その人
の生き様そのものがコロッと出て来た気がします。

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