鳥の話 14
ここで、鳩出しの代表的マジシャン達を2つのグループに分けて考察して
みましょう。
[Aグループ] [Bグループ]
チャニング・ポロック グレッグ・フリューイン
ランス・バートン ジェイソン・バーン
ジェームス・ディメール ジョナサン・デビット・バス
Aグループは、黒い燕尾服にクラシックなBGMで白い鳩を出現させる
伝統的なスタイルと言えるでしょう。
対してBグループは、燕尾服の色も黒にこだわらず、革製やカラフルな
衣装を着るなどして、テンポアップされた現代的なBGMで美しく染めた
カラー鳩を出現させます。
どちらが良いのかは好みの問題ですが、私はAグループの鳩出しの方が
好きというよりもしっくり来ます。
なぜなら元々がクラシックなために、時代が変化したり本人が年齢を重ね
ても芸とのズレが生じないというのが理由の1つです。
Bグループの演出は、新しいスタイルの衣装や道具やBGMを使っていても
「鳩」という素材だけが昔を引きずっているために、どこかでズレが生じて
いるように感じてなりません。
また、鳩を染めるのは現象を鮮やかに見せる狙いもあるのですが、派手な
衣装やBGMに鳩の方を合わせている感じも否めません。
80〜90年代前半にコンテスト荒らしをしていたジェームス・ブランドン
は、それこそ宇宙戦士のような前衛的なスタイルで、派手な剣を手に火花や
煙の効果を用いながら鳩を出すのですが、ステージに登場した瞬間だけは
「あっ新しい」と思っても、残念ながら鳩が出た途端に昭和を感じてしまう
のです。
動物を用いたマジックの場合、マジシャンが未来志向の演出にこだわっても
そのこだわりに合った新種の生物が誕生するわけではありません。
あくまでも現存する動物を使うしかないのです。(ジャック武田氏以外は)
私も染めた鳩を使っていた時期がありますが、特にBグループのマジシャン
達のように新しい鳩出しをやろうとして染めていたわけではありません。
数羽のカラー鳩をボックスに入れると、それらの色が融合したように一瞬
にして鮮やかなコンゴウインコに変化するという現象のためでした。
いわゆるブレンドシルクの現象なのですが、何度か演じているうちに大きな
マイナス面に気づいて止めてしまいました。
鳩の色が染めたものであることは観客も理解しているようでしたが(かなり
毒々しい原色に染まりますから)、そのことによって、何も手を加えていない
天然で鮮やかなコンゴウインコまでもが、染めた色だと誤解されたのです。
(すっぴんで美しいのに厚化粧だと思われたら不憫ですよね…例えとしては
説得力あるのかな?)
別に鳩出しに限らず、熟考せずに「いいこと思いついちゃった!」とばかりに
膝をポンッと叩いて行動すると、必ず矛盾が生じます。
マジシャン仲間が「それいいねえ」と誉めてくれても、本当におかしいことは
観客の方が教えてくれるものです…つづく。
[追記]
どうやって鳩を染めればいいのでしょう?
私の場合、初期は食品を染める塗料を筆で塗っていたのですが、時間を
要するうえにムラが出る欠点がありました。その後大手のペットショップ
で、プードルの耳や尾をピンポイントで染めるスプレーを見つけて使用して
いました。色も青や緑やピンク等多彩なバリエーションがありました。
(ゴールドとシルバーだけは、微妙なので使ったことはありません。)
現在は販売されているかどうかは知りませんが、興味のある方は探してみて
下さい。
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