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2009年7月

良い事と悪い事

[良い事]
先日出演した「行列のできる法律相談所」は、おかげさまで23.5%という
高視聴率をマークし、多くのお問い合わせを頂いています。
有難うございました。

[悪い事」
この数日、福岡では記録的な豪雨による甚大な被害が発生しました。
私も被害者の一人です…3ヵ月前に購入し、つい先日コーティングをしたば
かりの愛車が走行中に冠水してしまいました。動かなくなった車の周囲の
水かさは増す一方で、生命の危険を感じるほどだったため、車を放置して
脱出しました。(私のレパートリーにエスケープマジックはありませんが、
初演が水中大脱出になるところでした。)その後ディーラーさんに回収して
もらいましたが、エンジンや電気系統はアウトの状態で、保険もどのような
査定になることやら…とほほ。

[ちょっと良い事]
いつまでもレンタカー生活を続けるわけにもいかないし、お気に入りの車
だったので、懐具合は痛いのですが、思い切って新車を買い直すことに
しました。ヤナセさんに探してもらったところ、全く同じ新車が大阪に1台
だけあるとのこと…納車次第またコーティングです。

本当に人生というのは、良い事と悪い事の繰り返しです。
気を付けなければならないのは、悪い事が続くと、いつか晴れる日が来るさ
と自分を励ますのに、良い事が続くと、調子に乗ってそれがいつまでも続く
と勘違いして油断をしてしまうことです。
昨今のマジック界からはあまり良いニュースは聞こえて来ません。
以前の考察でも書いたのですが、バブルはいつか弾けるからバブルであり、
ブームはいつか去るからブーム、レギュラー出演はいつかなくなるからこそ
レギュラーなのだと覚悟するべきでしょう。

しかし、悪い事が続いたとしても、それらは次にやって来る良い事にとっての
絶妙な調味料として、いい味を出してくれるはずです。
駆け上がる自分、枯れて行く自分を甘んじて受け入れるのが充実した人生だと
思います。

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コーティング

私は自他共に認めるきれい好きです。(少し神経質過ぎるのは自覚して
いますが…)毎日の掃除をかかさないのはもちろんですが、特にマジック
道具は全て専用のATAケースを製作し、移動や搬入・搬出の際に傷が
付かないように細心の注意を払っています。
イリュージョンを毛布やプチプチビニールで包んで車に積みっぱなしなど
もってのほか! 道具を大切にしないマジシャンは絶対に売れません!

で、本題に入りますが、以前から車のガラスコーティングに興味があり、
信頼できそうな業者さんを選定してお願いしてみました。
結果は…1週間待ったかいがありました。驚くほどにピッカピカです。
青空や景色が映り込むほどの美しさです。恐るべし鏡面加工。
撥水性も良く、汚れにくくなりました。
(マジックの道具もコーティングしてもらいたいくらいです。)

興味のある方には是非お勧めします。
業者さんが公開しているコーティングの過程はこちら

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鳥の話 13

1992年、IBMソルトレイクシティー大会に参加しました。
この大会で3人の素晴らしいバードマジシャンを目撃することになります。
コンテストで2人、ガラショー(ゲスト)で1人。

コンテスタントの2人は、グレッグ・フリューインとジェイソン・バーン。
2人とも完璧に調教されたカラー鳩をユニークかつ斬新な手法で、テンポ
よく出現させていきます。しかしタッチもそっくりなら使っているBGMも
同じ…どちらかがコピーしたのであれば明らかな優劣はあるはずだし、
図々しく同じステージには立たないだろうと訝っていると、後で理由が
分かりました。彼等は実は前年までダブルビジョンという名のコンビを
組んで、一緒に演じていたらしいのです。それが仲違いしてコンビ解消、
各々でコンテストに出場したとのこと。どおりで目も合わせないはずです。
甲乙つけがたい見事な鳩出しでしたが、審査員の票が割れたらしく1位は
カードマニピュレーションのジュリアナ・チェンでした。もしどちらか
1人しか出場していなければ、結果は変わっていたかもしれません。

ガラショーに登場したブレット・ダニエルズ…この大会の全てを持って
行った感があります。彼は実はグレッグとジェイソンの師匠筋にあたる
マジシャン、いや、もはやバードイリュージョニストです。
突然ホールの後方から飛んで来るタイハクオウム、そのオウムを鳥かご
に入れると美女に変化、カードマニピュレーションの途中にコンゴウインコ
の出現、オウムによるカード当て、ゾンビボールの演技の後スカーフから
コンゴウインコの出現、客席を旋回して手元に戻ると分裂…その都度に
悲鳴のような歓声が沸き起こります。190センチ近い大男でリーチも長く
両手に持ったコンゴウインコが小さく見えるダイナミックな演技でした。

バードマジック大国アメリカでは、かなりの勢いで鳩はもちろんインコや
オウムを出すマジシャンが増えています。
これには3つの理由が考えられます。
1. 憧れの対象となる、カリスマバードマジシャン達の存在
2. 繁殖が盛んなため、鳥の価格が安い
3. 飼育し易い環境(広い国土ゆえに近隣住人を気にしなくて済みます。)

以前ラスベガスのコンベンションのジュニアコンテストで男の子がコンゴウ
インコを出現させて飛ばしたのに驚き、アメリカではここまでポピュラーな
のかと考えさせられました。

ヨーロッパ諸国の事情は日本と似ているようです。国土も狭く鳥の価格も
高いので、大型鳥を出すマジシャンが目立って増えた感はありません。
鳥に限らず、猛獣や象を使ったり超大型イリュージョンの分野はアメリカ
の独壇場と言えるでしょう。

お国柄が違うんだと愚痴っていても、物事は進みません。
帰国後、さらにバードマジックの研究に熱が入ります…つづく。

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Dr.ZUMA TV出演のお知らせ

日本テレビ 「行列のできる法律相談所」

2009年7月19日(日) 21:00〜21:54

※今回も三志郎&YOKOにバックステージを支えてもらいました。
 両氏に感謝です。それと北村弁護士…グッジョブでした!


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夢って?

つい先日「プロマジシャンになるのが夢なんです。できたら弟子に…」と
言う20歳の大学生と出会いました。年に数回こんな機会はあるのですが、
このような若者に対して、私が常に苦言を呈するのは、簡単にプロ宣言
できてしまうマジシャンになるのに「夢」なんて大それた単語を使うべき
ではないということ。それならば、現存するプロマジシャンは全員が夢を
実現したことになってしまいます。果たして全てのプロマジシャンが、夢が
叶ったと満足して生活しているでしょうか。
決してそんなはずはありません。あてにしていたレギュラー出演の店から
リストラされたり、そもそも店自体が潰れたり、営業本数が激減したり、
実は苦しいくせにアマチュアの視線からはそう見えないように見栄を張る
プロがいるために、勘違いする若者が現れるのもいたしかたない現実なの
かもしれません。
重要なのは「どんなプロマジシャンになるのか」であって、その目的地を
あらかじめ設定して、人生の時間配分を計算しながら、ほぼ定刻に到着
した時に、はじめて「夢が叶った」と認識すべきものではないでしょうか。

飛行機に例えるならば、プロマジシャンになること自体は目的地ではなく、
単に離陸しただけのことです。とりあえずプロになっちゃえという考え方は
機体の整備も不十分で、燃料タンクはからっぽの状態で離陸するという
恐ろしい状態なわけで、結局は誰かから空中給油をしてもらわなければ
墜落してしまうような人生になりかねません。
もっと恐ろしいのは、空中給油しようにもタンクどころかエンジンすら付い
ていない、単にブームという風に乗って飛び立ったグライダーだったことに
本人が気付く瞬間です。
アマチュアの間にしっかりと機体整備(研究や練習)をして、充分な燃料
(レパートリー)を確保して、できれば予備の燃料(貯金)を積んで飛び
立ちましょう。

あくまでも私の持論ですが、若い頃に身体的ピークがあるアスリートなら
いざしらず、慌ててプロマジシャンになる必要があるのでしょうか。
好きなことで食べて行きたい…そりゃ誰だってそうでしょう。
求職者があふれているこの厳しいご時世に、若くしてそんな贅沢を言う者
は、裏を返せば嫌いなことはしたくないという証拠であり、何事も長続き
できるとは思えません。(残念ながら、世の中にマジシャンという職業が
あるからこそ、こんないい加減な人でも生きていけるんだなあと思ったこと
が何度かあります。)

マジックさえできれば即プロになれると思いがちな若者が多いわけですが、
マジシャンとしてウケて生計を立てるというのは、人間的総合力が不可欠
ですから、一般的な職業を体験し、ある程度の社会的常識を身に付けたり、
造詣を深めてからプロになった方が絶対に得だと思います。
自分に向いている安定した職業に就いたとして、それを辞めてまでもやはり
プロになる強い意志と度胸が自分にあるかどうかは、複数の選択肢がある
時でないと自覚できません。プロになる決断をした者と、マジシャンになる
しかなかった者とは、天と地の開きがあります。「決断」というのは何かを
「決める」ことと同時に何かを「断つ」ことに他なりません。

私自身も学生時代からステージに立って報酬を頂くという、セミプロあるいは
パートタイムプロという立場を長年続けていたわけですが、現在でも特にプロ
活動によって収入を得る必要のない生業を持つ多くのアマチュアが、「趣味」
の域に留まらず「プロ活動」をしてしまいがちなのは何故なのでしょう?
作家の村上龍氏の以下の文章を読んだ時に、長年の疑問が解明しました。

「趣味」の世界には心を震わせ、精神をエクスパンドするような失望も歓喜も
興奮もない。真の達成感や充実感は、多大なコストとリスクと危機感を伴った
作業の中にあり、常に失意や絶望と隣り合わせに存在している。つまりそれは
我々の「仕事」の中にしかない。

これを読むと「趣味」では飽き足らずに「仕事」にしてしまう心理には深く
共感するところです。冒頭の大学生の「夢」というのも理解できる気もします
が、私としては、他人様の人生に変な影響を与えぬように、これ以上の意見を
するのは自制すべきでしょう。

そもそも「夢」を持つか持たないのかすら本人の自由なのです。
幼少の頃は「夢を持て!」と励まされて、大人になると「夢なんか見るな!」
と叱られるんですから…ホント、他人は勝手です。

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