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鳥の話 8

ジョセフ・ガブリエル…1986年IBMロングビーチ大会のゲストとして登場
しました。当時すでに、ラスベガス・スターダストホテルのレギュラーマジ
シャン(後にフラミンゴヒルトンに移籍し、1997年にはブロードウェイに
進出)であり、超有名番組「ザ・トゥナイトショー」に数度出演を果たすなど
の成功をおさめており、聞いた話では、コンベンションにはそれほど興味が
無く、このようなゲスト出演は最初で最後ではないかと言われていました。
(2016年IBMサンアントニオ大会のガラショーに久しぶりに出演したよう
です)

確かにそうですよね。コンベンションにプロが出演するのは、そこでの優勝や
ゲスト出演した実績を利用して、次の良い仕事を得るのが最大の目的である
以上(ラスベガスのレギュラー出演はある意味ゴールですが、コンベンション
のゲスト出演を繰り返すことは上がりの無いスゴロクのようなものです。)、
すでに成功しているマジシャンにとっては、わざわざギャラの安いコンベン
ションに出ることに魅力を感じるわけがありません。
マニアの前でウケるのが生き甲斐だったり、ディーラーとして出店することに
メリットがあるという理由の人も多いようですが…まあ人それぞれでしょうが
一般人に知られることもなく、世界チャンピオンだと言い張り続ける人生も
どうなのかなと…。
ですからデビット・カパーフィールドやランス・バートン、日本においては
Mr.マリックのように、真の意味で成功したマジシャンがコンベンションで
演技することはほとんどありません。(出演しないことが成功の証しかも)

イギリスのトップマジシャン、ポール・ダニエルズの紹介でジョセフが登場
しました。目が覚めるような鳩のベアハンドプロダクションの連続、合わせた
両手の間から湧き出るように現れるセキセイインコ達…最後は2羽の巨大な
コンゴウインコの出現。1羽は会場を旋回した後、手元には戻りませんでした
が、嵐のようなスタンディングオベーションでした。(今でもこの映像を観
ると涙腺が緩みますね)

ここでベアハンドプロダクションについての考察です。(以下ベアと表記)
一般的な鳩出しのイメージは、ハットやシルクからもぞもぞと出て来る感じ
ですが、ベアは、一瞬にして手元やステッキやファンカードの上などに出現
させたり、鳩を分裂させる際に用いられる方法です。
しかしあざやかな反面、ばれやすい危険性をはらんでいます。
シルクから出現させる手法では、ロードして手元に到達するまでの過程は、
よほど下手な動きをしない限り、客の目に触れることはありません。
ベアの場合は白い大きな物体が一瞬とは言え、A地点からB地点へ移動
するのですから、その軌道がはっきり見えてしまう可能性が高いのです。
とにかくジョセフほどのスキルがあれば別ですが、多用するのはお勧めしま
せん。5〜6羽の鳩の手順の中で1〜2回程度アクセントとして演じるのが
ベストでしょう。
稚拙なテクニックのマジシャンが演じた場合、ネタバレの危険性の他にも鳩
の命を危険に晒してしまうのです。実際にそういう失敗をしたマジシャンを
知っていますが、ジャリが鳩の首や足に絡んだことに気づかずに一瞬で引っ
張り出せば、その残酷な結末は想像がつくでしょう。

ここでワンポイントアドバイス…1羽の鳩に、戻って来たり、ベアでステッキ
にとめたりと、多くの役割を求めてはいけません。「この鳩にはこの役割」
と固定すべきです。ベアで使用する鳩には、飛び立たない調教をします。
ある程度羽根を間引いた後に指にとめて、すばやく上下左右に動かしても、
しっかりと指を掴んで飛ばないようになるまで慣らします。
ベアでは一瞬で出現して目的物に安定してとまるために、握力を強化する
必要があります。日頃から止まり木の太さを指よりもやや細めにして飼う
ようにすれば握力は次第に強くなり、指にとめた時にそれを実感できるよ
うになります。鳥かごの中や移動用のキャリーの中に止まり木を設置せずに
地べたを歩かせる飼い方などはもってのほかです。物が掴めないベタ足に
なる上、糞で足や尾羽根が汚れます。
また鳩によってはベア用のハーネスを装着した途端にへたへたと座り込む
タイプもいますが、これはベアには向いていませんので避けましょう。

さあ、刺激を受けたアメリカから帰国、学生セミプロマジシャンとしての活動
が始まります…つづく。

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