« 鳥の話 8 | トップページ | 鳥の話 9 »

分類に意味はあるのか!?

航空機の中で乗客の容体が悪くなり、「お客様でお医者様はいらっしゃい
ませんか?」と機内アナウンスが流れるシーンをドラマ等で観たことがある
でしょう。(私は実際にこのような場面に、過去4度も遭遇しました。)
この場合は○○科とかの専門性は関係無く、「医者」という一括りで認識
されているわけです。

マジックの世界においては、「クロースアップ」や「イリュージョン」等
の単語の認知度が以前よりは高まったとはいえ、まだまだ一般に広く認識
されているわけではありません。
銀座のクラブでテーブルホッピングの仕事をしていた頃、酔客から時々
「今パッと鳩出せる?」とか「この女のコを浮かせてよ」などと言われた
ものです。これも客サイドにはクロースアップやステージ等の分類という
ものは無く、「マジシャン」という一括りの認識でしかない証拠でしょう。
このような分類は、あくまでマジシャンサイドの都合なのですから。

医者の世界でも専門分野は、かなり細分化されています。
内科、外科、精神科、眼科…。内科の中でもさらに呼吸器科、循環器科、
消化器科…。
どちらの世界も、1人の人間が全ての分野をマスターするのは不可能に近い
ですから、どこかで線を引いてスペシャリストにならざる得ないのではない
でしょうか。(しかし過疎地においては、1人の医者がほとんどの症状に対応
している実態を考えると、マジシャンに例えるならば、何でもこなす偉大な
ジェネラリストと言えるかも知れません。…実はこれが私の目標です。)

ここで少し脱線。
このようにマジシャンと医者の世界は似てるなあと思っていたのですが、
全く違うことに気付いたのです。(単に気付いただけで、それがどうした
程度のことですから。)
医学の世界は人体における疾病が対象であって、スケールで分類している
わけではないのです。つまり「クロースアップからイリュージョンまで」と
「赤ちゃんからお年寄りまで」は全く違うということです。
ですから無理矢理合致させるとしたら、メンタルマジックと精神科とか、
マニピュレーションと外科、催眠術と麻酔科という感じになるのでしょうか。
(ホントにどうでもいいことですよね。)ということは、スケールとは関係
無く「現象のスペシャリスト」がいたら面白いかも…コインにタバコを通し
たと思ったら、本人が鏡を通り抜けて去って行く貫通のスペシャリストとか、
客の指輪を浮かせたと思ったら、自身も浮いているという浮揚のスペシャリ
ストとか…はい、脱線終了。

とにかくマジックにおいて、現象による分類はともかく、スケールによる
分類は必要なのでしょうか?
1988年のFISMでは、初めてクロースアップ部門からグランプリウィナー
が誕生しました。ウィナーのジョニーエース・パーマーがカップ&ボール
でヒヨコを出し、最後に鳩を出して分裂まで演じたことに対して、いくら
なんでもクロースアップで鳩を出すなんてという非難の声は、会場にいた
私にも聞こえてきました。それならば、クロースアップでは動物厳禁とか
何センチ×何センチ以上の道具は不可とかのルールを明確にするべきでは
ないでしょうか。

マリック氏は言っています…「テレビの世界では、スケールで分類する
なんて全く意味が無いんだよ。イリュージョンがアップで映った時など
視聴者は、その会場の最前列の客よりも近くで観ていることになるんだ
から。最前列の客には見えないはずのイリュージョンの傷や、ペンキが
剥がれた痕まで見えるんだから。もはやクロースアップだよね。客から
2メートルの距離でバレるような出し物は、テレビでは絶対にやっては
いけないよ。」

今から20年近く前になるでしょうか…私とマリック氏の会話です。

私 「僕が最も凄いと思うマジシャンは、クロースアップではMr.マリック
  ステージならジョセフですねえ。」
Mr.マリック「ふ〜ん。俺ステージもやってるんだけど。」
私 「……。」(あちゃ〜、やっちまった。)


.

|

« 鳥の話 8 | トップページ | 鳥の話 9 »

マジック」カテゴリの記事