鳥の話 6
現在は、鳩出しに関するレクチャーDVDも様々販売されており、その中で
各マジシャン独自の出し方や調教方法が解説されているようです。
私はDVD販売はおろか講習会すらしたことはないのですが、飛ばした鳩が
戻って来る調教に関する私なりのアドバイスを少しだけ記載します。
(これまでも、真摯な質問であれば個人的にメールで応えています。)
当然のことですが、若い鳩の方が調教しやすいのは言うまでもありません。
若い鳩ほど足がピンク色で、老鳩は濃い紫色になっていきます。
[第1段階]
まず素質のある鳩を見つけること。やみくもに調教すれば、どんな鳩でも
飛んで戻って来るわけではありません。
とりあえず部屋の中で鳩を飛ばしてみましょう。そしてその飛び方をよく
観察します。ダメな鳩は、フィギアスケートのスピンのように回転しながら
墜落したり、壁にぶつかってそのままバサバサと真下に落ちたりします。
これらは自分の身体の動きを自身でコントロール出来ない鳩で、矯正する
のはまず困難です。このタイプの鳩はハーネスに入れて、無難にシルクから
出現させる方法で使うのがよいでしょう。
部屋の中を飛び回って家具の上にとまったり、照明器具にとまる鳩は素質
があります。偶然にとまったのかも知れませんが、とにかく目的地を意識
して、そこに到達出来るかどうかを見抜くのです。
ダメな鳩は身体をコントロール出来ないために、到達したい目的地を見つけ
たとしても辿り着けません。まれに、飛ばすと羽ばたいたままその場で静止
(ホバリング)する鳩がいますが、これも大変素質があります。
[第2段階]
このように選別したら、手から手に20センチ程度ジャンプさせる調教を繰り
返します。数日後には30〜40センチの距離をジャンプ出来るようになる鳩
もいます。この時期にはまだ投げたりしてはいけません。調教と言うよりは、
これからの調教に備えての体力作りです。
皆さんの鳩が普段鳥かごに入れっぱなしであれば、この程度のジャンプで
すぐにヘトヘトになることに気付くことでしょう。出来れば5〜6羽の鳩を
用意して、ローテーションを組んで行うことをお勧めします。
一巡する頃には体力が回復しているので、1羽を調教するより効率的です。
[第3段階]
鳩の顔を自分側に向けて、両手で包み込むように保持して両手を前方に伸ば
します。(前にならえのポーズで鳩を持っている感じ。)
ここで鳩をちょっと跳ね上げながら解放し、と同時に片手を差し出しながら
2、3歩後ろに移動します。つまり鳩は空中で解放されるだけで、人間の側
が離れて行くようにするのです。短距離でもこれが出来るようになった鳩は
広い部屋で行えば、手を追いかけてずっと飛んで来るようになります。
これを数日間続ければ、鳩の体力は飛躍的に向上します。
[第4段階]
最終段階です。人間は移動せずに、鳩の顔を自分側に向けて両手で包んで
ちょっと前方に投げます。鳩にとっては、第3段階のように単に空中で解放
されるのではなく、後ろ向きに投げられたために一旦ブレーキをかけて、
あらためて前進しなければならないために、かなりの体力的負担となります。
これは本番と同じ動きですから重要です。忙しくても1日数回でいいので、
毎日繰り返します。いつまで繰り返せばいいかって?…毎日です。
戻って来るようになったからといって、1週間でもサボると、鳩の体力は
驚くほど低下します。(継続は力なり…過去、数人に調教方法を教えまし
たが、根気の無い生き様のマジシャン達には、やはり無理でした…鳩以前に
自分を調教するべきでしょう。)
かなりの信頼感を感じれば、鳩の顔を客側に向けて投げると大きく旋回して
戻って来るようになります。実はこの方が、鳩にとっての体力的負担は少ない
のです。(後ろ向きに投げられて、ブレーキをかける必要が無いために)
いずれにしても、最終的に本番で飛ばしても大丈夫かどうかは、自分の感覚で
判断しなければなりません。(客席に墜落してクレームが発生しても自己責任
ですから、その覚悟が無いマジシャンはやるべきではないでしょう。)
次回は、私も大きな勘違いをしていた「調教時の照明」についてです。
しかしこんなコアな話で、誰かの役に立っているのでしょうか?
う〜ん、微妙…つづく。
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