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鳥の話 4

成績は低空飛行のまま高校を卒業し、浪人生活が始まりました。実家に
いると道具に触ったり鳩を調教したりと、絶対に勉強に集中しないことは
目に見えていたので、思い切って実家を離れ北九州市に引っ越しました。
(意志が弱いので、厳格なことで有名な北九州予備校を選んだのです。)
このために、飼っていた鳩は泣く泣くペットショップに引き取ってもらう
ことになりました。

しかしマジック好きの熱がそう簡単に冷めるわけはなく、本能的にその地
のマニアやマジックが見れる店を見つけてしまいます。さらに、3畳間の寮
暮らしだと、練習出来るマジックは必然的にクロースアップになってしまい
ます。中高生の頃は、8対2の割合でステージマジックに取り組んでいまし
たが、この予備校時代にクロースアップの面白さにハマっていきました。
受験で上京すれば、わずかな時間を利用してでも、五反田にあった当時の
マリック氏のショップを尋ねたり、マジックの洋書を売っている神田のタトル
商会に行ったり…(まったく何のために浪人しているのでしょう。)
2浪した結果、ようやく志望校に合格しました。

さて大学生活が始まったら、待ちに待った鳩のマジックの再開です。
もちろんペット可の集合住宅はほとんど無い時代ですから、こっそり飼う
ことになります。鳩を飼っている方なら理解して頂けると思いますが、強烈
な鳴き声ではないものの、四六時中クルックルーと鳴かれると、ボディー
ブローのように効いて来ます。田舎の広い実家では感じなかったのですが、
狭い空間で一緒に暮らし始めると、かなりのストレスです。それでも6年間
の学生時代に、最終的には20羽以上飼っていたのではないでしょうか。
ベストの5〜6羽で手順を組もうとすると、やはりそれだけの数の中から
選抜する必要がありました。

大学1年の頃、私がインコやオウムに興味を持つ最初のきっかけになった
素晴らしいマジシャンの映像を観ました…ジョニー・ハート。
古い雑誌で写真だけは見たことがありましたが、これほど素晴らしいとは。
パリのオランピア劇場での演技なのですが、まず本人から滲み出る高級感が
違います。日本人がラメラメの燕尾服などを着るとダサイだけなのですが、
その顔立ちや金髪とあいまって実に神々しいのです。
見事なカードマニピュレーションの中に、アクセントとして突然現れる慣れた
セキセイインコ達、最終的には四ッ玉のように指の間にずらりと並ぶのです。
クライマックスは、束ねたシルクから白色オウム(タイハクオウム)の出現、
さらにその鳥を床に置くと、彼の肩まで飛んで来るのです。(数年前、彼が
出演するというその理由だけで、イギリスのコンベンションまで行きました。
残念ながら鳥のアクトはしませんでしたが、生の本人を見れただけで満足
でした。)

アクトを作る際に最も重要なのは、どんなクライマックスにするかだと思い
ます。オチに向かって演技が進行して行くわけですから、それが決まらない
ままではオープニングや途中の演技を考えても集中出来ないはずです。
(目的地不明のまま離陸する飛行機のようなものですから。)

当時の私のクライマックスは、1羽あるいは2羽の鳩の打ち消しでした。
そしていつかお金が貯まったら、ニールセンのバニシングケージ(消える
鳥かご)を買うのが当面の夢でした。

しかし、心の叫びが聞こえてきます…白いオウムを出したい!…つづく。


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