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2009年4月

鳥の話 6

現在は、鳩出しに関するレクチャーDVDも様々販売されており、その中で
各マジシャン独自の出し方や調教方法が解説されているようです。
私はDVD販売はおろか講習会すらしたことはないのですが、飛ばした鳩が
戻って来る調教に関する私なりのアドバイスを少しだけ記載します。
(これまでも、真摯な質問であれば個人的にメールで応えています。)

当然のことですが、若い鳩の方が調教しやすいのは言うまでもありません。
若い鳩ほど足がピンク色で、老鳩は濃い紫色になっていきます。

[第1段階]
まず素質のある鳩を見つけること。やみくもに調教すれば、どんな鳩でも
飛んで戻って来るわけではありません。
とりあえず部屋の中で鳩を飛ばしてみましょう。そしてその飛び方をよく
観察します。ダメな鳩は、フィギアスケートのスピンのように回転しながら
墜落したり、壁にぶつかってそのままバサバサと真下に落ちたりします。
これらは自分の身体の動きを自身でコントロール出来ない鳩で、矯正する
のはまず困難です。このタイプの鳩はハーネスに入れて、無難にシルクから
出現させる方法で使うのがよいでしょう。
部屋の中を飛び回って家具の上にとまったり、照明器具にとまる鳩は素質
があります。偶然にとまったのかも知れませんが、とにかく目的地を意識
して、そこに到達出来るかどうかを見抜くのです。
ダメな鳩は身体をコントロール出来ないために、到達したい目的地を見つけ
たとしても辿り着けません。まれに、飛ばすと羽ばたいたままその場で静止
(ホバリング)する鳩がいますが、これも大変素質があります。

[第2段階]
このように選別したら、手から手に20センチ程度ジャンプさせる調教を繰り
返します。数日後には30〜40センチの距離をジャンプ出来るようになる鳩
もいます。この時期にはまだ投げたりしてはいけません。調教と言うよりは、
これからの調教に備えての体力作りです。
皆さんの鳩が普段鳥かごに入れっぱなしであれば、この程度のジャンプで
すぐにヘトヘトになることに気付くことでしょう。出来れば5〜6羽の鳩を
用意して、ローテーションを組んで行うことをお勧めします。
一巡する頃には体力が回復しているので、1羽を調教するより効率的です。

[第3段階]
鳩の顔を自分側に向けて、両手で包み込むように保持して両手を前方に伸ば
します。(前にならえのポーズで鳩を持っている感じ。)
ここで鳩をちょっと跳ね上げながら解放し、と同時に片手を差し出しながら
2、3歩後ろに移動します。つまり鳩は空中で解放されるだけで、人間の側
が離れて行くようにするのです。短距離でもこれが出来るようになった鳩は
広い部屋で行えば、手を追いかけてずっと飛んで来るようになります。
これを数日間続ければ、鳩の体力は飛躍的に向上します。

[第4段階]
最終段階です。人間は移動せずに、鳩の顔を自分側に向けて両手で包んで
ちょっと前方に投げます。鳩にとっては、第3段階のように単に空中で解放
されるのではなく、後ろ向きに投げられたために一旦ブレーキをかけて、
あらためて前進しなければならないために、かなりの体力的負担となります。
これは本番と同じ動きですから重要です。忙しくても1日数回でいいので、
毎日繰り返します。いつまで繰り返せばいいかって?…毎日です。
戻って来るようになったからといって、1週間でもサボると、鳩の体力は
驚くほど低下します。(継続は力なり…過去、数人に調教方法を教えまし
たが、根気の無い生き様のマジシャン達には、やはり無理でした…鳩以前に
自分を調教するべきでしょう。)
かなりの信頼感を感じれば、鳩の顔を客側に向けて投げると大きく旋回して
戻って来るようになります。実はこの方が、鳩にとっての体力的負担は少ない
のです。(後ろ向きに投げられて、ブレーキをかける必要が無いために)
いずれにしても、最終的に本番で飛ばしても大丈夫かどうかは、自分の感覚で
判断しなければなりません。(客席に墜落してクレームが発生しても自己責任
ですから、その覚悟が無いマジシャンはやるべきではないでしょう。)

次回は、私も大きな勘違いをしていた「調教時の照明」についてです。
しかしこんなコアな話で、誰かの役に立っているのでしょうか?
う〜ん、微妙…つづく。


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Dr.ZUMA TV出演のお知らせ

  TBS 「うたばん」

2009年4月26日(日) 19:57〜20:54

※ ハードなタイムスケジュールで、リハーサル無しのぶっつけ本番
  でしたが、なんとかやり切った感じです。
  バックステージを支えてくれた三志郎・YOKOの両氏に感謝します。

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鳥の話 5

ある日、某百貨店の最上階のペットショップで白色オウム(キバタン)を
見つけました。数週間悩んだ後、ある道具のために貯めていたお金と、
他にもなんとか工面して、ついに購入しました。
しかし、これが悪夢の始まりでした。
とんでもない雄叫び…ステンレスキッチンがキーンと反響するほどの声で、
早朝と夕方に鳴き続けます。(そういう習性なのです。)
日中のペットショップでは鳴き声を聞いたこともなかったので、おとなしい
鳥だと思っていたのです。何事も冷静に時間をかけて、ある程度は勉強する
べきでした。(良心的なショップならば、雄叫びや習性のことを親切に教え
てくれるのですが、ここの店主は全く教えてくれませんでした。)
このままでは上下左右の住人から苦情が来て、さらには隠し通した鳩までも
見つかって退去させられる…1週間で手放すこととなりました。
学生の分際で、大型のインコやオウムを飼える立場ではなかったのです。
他人に気兼ね無く飼えた上で、調教に必要な理想の飼育環境は「一戸建て」
でしょう。夢が叶うとしても、まだまだ先になることを覚悟しました。

さて、気を取り直して鳩の練習を続けていたわけですが、同時に研究を
していた分野があります。高校時代に酒匂氏の演技を見て、俄然興味を
持ったファイヤーマジックです。福岡にはこの分野の第一人者がいました
…故菊地豊氏。酒匂氏も学生時代は氏の下で修行をして巣立って行った
わけですが、私も約3年間入り浸って、道具作りを手伝いながらファイヤー
マジックの研究をしていました。そして初の渡米も氏と一緒でした。

ある程度アクトが完成して、大学祭等で演技するだけでは満足出来なく
なると、海外のコンテストに挑戦したいという欲求がムラムラと沸き上がり
ます。大学の夏休みと海外のコンベンションのスケジュールを調べると、
アメリカ・セントルイスで開催されるコンベンションの申し込みがなんとか
間に合いました。
しかし、問題は鳩を持って行けるかどうかです。不可能ではないのですが
お役所仕事で様々な書類が必要な上、かなり前から申請しなければならな
かったために、諦めざる得ませんでした。
結局菊地氏のつてで、テキサスのマジシャンから数羽の鳩を売ってもらう
ことになりましたが、慣れた鳩を簡単に譲ってくれるとは思えませんので、
調教のためにコンテストの1週間前に渡米しました。練習では全然上手く
いかなかったのですが、本番だけはキマりました。
結果的には優勝出来ましたが、運も良かったのでしょう。表彰式の後に行
われる受賞演技では、全ての鳩が飛んで逃げるボロボロの状態だったので。
ところで、もう一つ運の良い出来事がありました。
鳩は日本に持って帰れないので、どうしたものかと困っていると、マニア
のおじさんがかなり高い値段で買い取ってくれました。どうやら優勝者の
鳩だから、良く調教されていると勘違いしていたようです。
(ボロボロの受賞演技の方は観ていなかったんだろうなあ。)

この後参加したミシガン州のコンベンションで、取材に来ていたカナダの
番組に急遽出演することに…しかし鳩が無い!
ここでまたも幸運が…鳩を買ってくれたおじさんがキャンピングカーで
現れて、貸してくれたのです。(幸運3連発!)

初の海外旅行も終わりに近づきました。スケジュールの違いで、菊地氏
とはシカゴで別れてロサンゼルスに向かいました。最後の夜はマジック
キャッスルです。完全会員制というのは知っていましたが、ダメもとで
訪れて入り口で交渉していると、コンテストの表彰式でのプレゼンター
を務めたビリー・マッコームが私に気付いてくれて、あっさり入場出来ま
した(幸運4連発!)。ここでは毎週出演者が入れ替わるのですが、今夜
の出演者は…なんと島田晴夫氏。2列目の中央の席で観ることになりま
した(幸運5連発!)。オープニングの鳩が私の頭上を飛んで、氏の手元
に戻って行きました。やっぱり鳥は飛んでこそ鳥。

次回は、具体的な鳩の調教方法についての考察です…つづく。


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一事が万事

何かの本で見たのですが、確かにその通りだと思います。

• 時間にルーズな人間は、お金にもルーズです。
• 車窓からタバコをポイ捨てするような兄ちゃんが、普段はきちんとゴミの
  分別をしているわけがありません。
• 車内が散らかっている人の部屋は、必ず散らかっています。
• 電車やバスの中で携帯電話で話す人は、運転中でも平気で使います。
• ルーズな人間ほど、連絡が付かなかったり時間に遅れたりするとすぐに
 「バタバタしてまして…」という魔法のように便利な言葉を使います。
 (バタバタという度に500円の罰金というバタバタ貯金をすれば、
  あっという間に貯金箱はいっぱいになるはずです。)

ところで、このような事柄はマジシャンの生き様にも結構顕著に現れます。

• 古くて縁が黒く汚れているカードを本番で使っているマジシャンの衣装の
  袖口は、やはり汚れています。
• 失敗した原因の解決策が見つかっていないまま、再びそのマジックをやる
  マジシャンがいるとしたら、その根拠は「次こそは大丈夫!」という根性論
  であることがほとんどです。
• 自信の無いギャグを言ってしまったマジシャンは、客より先に自分から笑い
  始める傾向があります。
• 雑な鳩出しをするマジシャンの鳥かごは、必ず糞が溜まって汚れています。
 (糞が蟻塚のようにタワーを形成していても平気です。)
• ファイヤーマジックの綿密なテストやリハーサルをしていないマジシャン
  は、本番に限ってライターオイルを注ぎ過ぎて慌てることになります。
• 自分自身の商品価値に自信の無いマジシャンは、ショーのクライマックスに
  陳腐なイリュージョンにでも頼らないと、手抜きをした不安を感じます。
• 消耗品をケチるマジシャンは、すぐに妥協してギャラを下げます。
• プライドの無いプロは、お金持ちのアマチュアに擦り寄ります。

自戒の念を込めながら、キリが無いのでこの辺で…。


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鳥の話 4

成績は低空飛行のまま高校を卒業し、浪人生活が始まりました。実家に
いると道具に触ったり鳩を調教したりと、絶対に勉強に集中しないことは
目に見えていたので、思い切って実家を離れ北九州市に引っ越しました。
(意志が弱いので、厳格なことで有名な北九州予備校を選んだのです。)
このために、飼っていた鳩は泣く泣くペットショップに引き取ってもらう
ことになりました。

しかしマジック好きの熱がそう簡単に冷めるわけはなく、本能的にその地
のマニアやマジックが見れる店を見つけてしまいます。さらに、3畳間の寮
暮らしだと、練習出来るマジックは必然的にクロースアップになってしまい
ます。中高生の頃は、8対2の割合でステージマジックに取り組んでいまし
たが、この予備校時代にクロースアップの面白さにハマっていきました。
受験で上京すれば、わずかな時間を利用してでも、五反田にあった当時の
マリック氏のショップを尋ねたり、マジックの洋書を売っている神田のタトル
商会に行ったり…(まったく何のために浪人しているのでしょう。)
2浪した結果、ようやく志望校に合格しました。

さて大学生活が始まったら、待ちに待った鳩のマジックの再開です。
もちろんペット可の集合住宅はほとんど無い時代ですから、こっそり飼う
ことになります。鳩を飼っている方なら理解して頂けると思いますが、強烈
な鳴き声ではないものの、四六時中クルックルーと鳴かれると、ボディー
ブローのように効いて来ます。田舎の広い実家では感じなかったのですが、
狭い空間で一緒に暮らし始めると、かなりのストレスです。それでも6年間
の学生時代に、最終的には20羽以上飼っていたのではないでしょうか。
ベストの5〜6羽で手順を組もうとすると、やはりそれだけの数の中から
選抜する必要がありました。

大学1年の頃、私がインコやオウムに興味を持つ最初のきっかけになった
素晴らしいマジシャンの映像を観ました…ジョニー・ハート。
古い雑誌で写真だけは見たことがありましたが、これほど素晴らしいとは。
パリのオランピア劇場での演技なのですが、まず本人から滲み出る高級感が
違います。日本人がラメラメの燕尾服などを着るとダサイだけなのですが、
その顔立ちや金髪とあいまって実に神々しいのです。
見事なカードマニピュレーションの中に、アクセントとして突然現れる慣れた
セキセイインコ達、最終的には四ッ玉のように指の間にずらりと並ぶのです。
クライマックスは、束ねたシルクから白色オウム(タイハクオウム)の出現、
さらにその鳥を床に置くと、彼の肩まで飛んで来るのです。(数年前、彼が
出演するというその理由だけで、イギリスのコンベンションまで行きました。
残念ながら鳥のアクトはしませんでしたが、生の本人を見れただけで満足
でした。)

アクトを作る際に最も重要なのは、どんなクライマックスにするかだと思い
ます。オチに向かって演技が進行して行くわけですから、それが決まらない
ままではオープニングや途中の演技を考えても集中出来ないはずです。
(目的地不明のまま離陸する飛行機のようなものですから。)

当時の私のクライマックスは、1羽あるいは2羽の鳩の打ち消しでした。
そしていつかお金が貯まったら、ニールセンのバニシングケージ(消える
鳥かご)を買うのが当面の夢でした。

しかし、心の叫びが聞こえてきます…白いオウムを出したい!…つづく。


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鳥の話 3

ビデオデッキが設置されたことは、高校受験合格に匹敵する喜びでした。
手当たり次第にマジックを録画したかったのですが、物事はそう甘くは
ありません…当時のビデオテープは1本が2千円程度だったと記憶して
います。家族1人に1本しか支給されませんでしたが、大学受験でテレビ
を観る暇もない姉から譲ってもらうなどしながら、着々と資料映像は増え
ていきました。

今でも民放が2つしか映らない地方なので、「笑点」や「ひるのプレゼント」
(近年の金曜バラエティーの枠)に登場するマジシャンの鳩出しは貴重な
映像でした。1979年からでしょうか、NHKが「世界のマジックショー」
というタイトルで海外のコンベンションの模様を毎年放送するようになりま
した。これによりプロ・アマ問わず全国のマジシャンが多大な恩恵を享受した
ことでしょう。それからは海外のマジシャンはもちろんのこと、島田晴夫氏、
渚晴彦氏、ジャック武田氏、故引田天功氏等の鳩出しの映像を何度繰り返し
観たことか。

思えば私くらいの年齢のマジシャンが、資料の無い不便さを味わった最後の
世代であると同時に、お手軽にビデオで研究を始めた最初の世代なのかも
知れません。私より上の世代のマジシャンの鳩出しからは、手順そのものは
チャニング・ポロックの影響を受けていても、独自のタッチや雰囲気を醸し
出すセンスやエネルギーを感じます。

入学した高校では、年に2回ほどステージマジックを披露する機会があり
ました。9月の文化祭と2月の予餞会(卒業生を送り出すイベント)です。
入学後、文化祭に間に合うように鳩出しを練習していましたが、落とし穴
があります。カードマジックの場合は技法を修得してもそれだけではマジッ
クとしては成立しづらいので何かのカードマジックの中で使用して活かす
のですが、鳩出しの場合はテクニックの練習のみで「現象」が成立してしま
うために、「演技」までは思いが至らないのです。

この夏、ホテルオークラで日本テレビ開局25周年記念「世界奇術大賞」が
開催されました。島田晴夫、リチャード・ロス、スライディニー等のスーパー
スターが集う大会だったので、親を拝み倒して参加させてもらいました。
後に同じ高校のOBだと判明する酒匂正文氏のファイヤーアクトも、この大会
で初めて見たのでした。とにかく世界の一流マジシャンの演技を生で見た
出来事は、16歳の私にとっては刺激が強過ぎました。もう頭の中は混乱し、
とても9月の文化祭までに手順を固めるのは不可能で出演を断念、安易な
「演技」をしようとしていたハードルの低い自分に嫌悪感を抱きながら、高校
でのデビューは翌年2月の予餞会にずれ込みました。島田晴夫、酒匂正文、
リチャード・ロスの3氏のコスプレで明け暮れた3年間でした。

今振り返っても、レベルの高いマジシャンに憧れたことは、その後の人生に
とって本当に良かったと思います。なにしろ高校時代にフィクルファイヤー、
ウォッチプロダクション、両手ミリオンカード、鳩の2羽消しやベアハンド
プロダクション等を人前で演じることを、出来はどうあれ一応は経験したの
ですから…(今でも多くの若手マジシャン達を見ていると、誰に憧れたかで
人生って結構左右されるんだなあと感じます。)

ただ、高校の3年間で最もやりたくて実現出来なかった現象がありました。
それは島田氏のオープニングエフェクト…鳩を飛ばして手元に戻って来る
演技です。どうすればあんなことが出来るのでしょう。(高校時代にこれを
実現出来なかったコンプレックスが、今でも鳥の調教にこだわる原動力に
なっているのかも知れません。)

さあ、諦めずに調教を続けようと思った矢先に卒業…全ての鳩を手放すこと
になりました…つづく。

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