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鳥の話 2

鳩は手に入れたものの、どうすれば鳩出しが出来るようになるのでしょう。
当時の私の周りには、鳩出しをやっているマニアもいなければ、ビデオ等
の映像資料も皆無でした。もちろんマジック用品のカタログには当時から
ダブパン等の鳩出し用の道具がありましたが、若くてイキがっている頃は
そんな道具には頼らずに、テクニックを駆使してスマートなマジックをやる
方が絶対にウケるし、格が上だと思うものです。(クロースアップで例えれ
ば、トリックデックには頼らない、シェルコインは使わないというポリシー
とかこだわりのようなものでしょうか。)

当時の唯一の拠り所は「奇術研究」という本からの情報でした。(1956年
に力書房から創刊された季刊誌で、1979年に廃刊と記憶しています。)
私がこの本を読み始めたのは、廃刊前の2〜3年でしたが、毎回様々な
特集や珍しい道具の広告が載っており、届くのを楽しみにしていました。
この本のバックナンバーに鳩出しの特集があったのです。(1968年奇術
研究49春号)さっそく取り寄せてみると、故高木重朗氏の解説による12
ページに及ぶ詳細な特集でした。ここに解説されているハーネス(鳩を出す
仕掛け)を製作するところからスタートです。
もちろん素材は布なので、難しい縫い物は母親に頼ることになります。
(マジックに没頭して成績も低空飛行なので頼りづらいのですが、背に腹は
代えられませんでした。)

ここで少し脱線。文中で秘密に繋がる用語(シェルとかハーネス)を出すの
はいかがなものかと感じる人もいるでしょうが、避けては通れません。
一般人は意外と気付いています。鳩は湧いて出るのではなく、どこかに隠し
ていることや、リンキングリングのどこかに切れ目があることくらい薄々感じ
ています。しかしこれらのマジックが脈々と演じ続けられているのは、鳩を
隠しているのは知られていても、それがどうやって手元まで到達するのかが
謎であったり、リングに切れ目があるのは知られていても、卓越した技術や
錯覚や仕掛けの進歩によって、とてもそうは見えないからでしょう。

タネ明かしの問題は、いつの時代にも結論は出ません。
以前TBSの「オフレコ!」という番組で、数回に渡ってマリック氏によるタネ
明かしの特集が放送されました。私もバードアクトでゲスト出演した際に、
あんな番組に出演するのはけしからんというお叱りも耳にしましたが、日常
行われているショーや発表会を観に行くと、そこではバレバレのマジックが
繰り広げられています。本人にタネ明かしの意志が無く、一生懸命演じた
結果ならばバレても許されるのでしょうか。悪気は無いというだけでロード
する品物やダンシングケーンの糸が見えていいのでしょうか。
(殺意が無かったという理由で殺人が許されていいわけがありません。)

マリック氏をかばうわけではありませんが、手加減を知らない「素人の喧嘩」
よりも、「プロ格闘家のエキシビションマッチ」の方が、ずっと安心して見て
いられるはずです。

話を戻します。試行錯誤しながらもいくつかのハーネスを作り、さっそく試し
てみると…これが膨らみは目立つわ、鳩は暴れるわで、あげくの果ては鳩が
脱出してひょっこり出て来る始末。初めて、ある程度の調教が必要なんだと
実感した瞬間でした。その後、鳩は次第に慣れていきましたが、いかんせん
本からは、タイミングや間といった動きを学ぶことは困難です。
(逆に、独自のタッチや間が生まれるという利点があるのも確かです。)

そして高校1年生の春、ついに我が家にもビデオデッキ様が降臨されたのです
…つづく。


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