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あれだけってどれだけ?

マジックを演じている方々ならば、誰でも一度は次のような質問をされた
事があるでしょう。「どれだけ練習したらそんな事が出来るんですか?」

数や量で表現されるものではありませんし、一般人の質問の主旨は期間で
しょうから、私の場合はあたりさわりの無いように「まあ、結構練習時間は
必要ですけどね…。」と応える程度でお茶を濁していますが、これがマジ
シャンからの質問であれば話は別です。

マジシャンから「どれだけ調教したらあれだけ鳥が慣れるんですか?」と
聞かれるのは困りものです。常識あるマジシャンならば、あまり意味の無い
質問だと理解してくれているはずなのですが…。
例えば、マジック歴30年と豪語していても、30年間何やってたの?という
程度のベテランもいれば、短期間でコツを掴んで、驚く程早く上達していく
若手もいます。(内田貴光やRYOTAと付き合っていると、特にそれを感じ
ます。)重要なのは期間ではなく、その密度と集中力なのですから。

昔、あるアマチュアマジシャンがコンテストに出場するにあたり、鳩を飛ば
して戻って来るノウハウの教えを請いたいとの事で、手順構成・調教方法を
含めてその演技の完成まで協力しました。その後、彼は近所の公民館を
借りてまで調教したらしく、3羽の鳩が確実に戻って来るようになったので
3羽全てを本番で飛ばしますとの連絡がありました。果たしてコンテストの
結果は…鳩は1羽も戻って来ませんでした。(本番とはそんなものです。)
悔しがる彼の一言は「あれだけ調教したのに…。」いったいどれだけだった
のでしょう?アマチュアからすれば「あれだけ」と努力を認めて欲しいのかも
知れませんが、プロから見ればたった「それだけ」だったのかも知れません。
冷たいようですが、結果が全てです。

確かに動物を自在に操れるようになるまでには(ましてお金を稼ぐレベル
になるまでには)、大変な根気と時間が必要です。ですから、これだけは
断言しておきます。
同業者の立場で後輩であるにも関わらず、挨拶も無しに他人のショーを
こっそり観に来て、簡単な部分だけお手軽に模倣する悪癖が染みついた
ローカルマジシャンは、「あれだけ」すら絶対に出来っこないのです。
だって「それだけ」のマジシャンなのですから。


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