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客観的に自分を見る

「私は自分を客観的に見れるんです。」…福田前首相が辞任会見の際に述
べたセリフです。この件に触れた理由は後回しにするとして、この一週間に
観たショーの感想を駆け足で…。(演目の詳細については触れません)

高橋ヒロキの初単独ライブについては、翌日昼食を食べながら本人にも話し
ましたが、彼本人は肩に力が入っていたにも関わらず、グダグダな進行が
いかにも彼らしく予想以上に楽しめて、90分が短く感じました。
テンヨーマジックフェスティバルの島田晴夫氏のアクトは、私にとっては
まさに国宝あるいは無形文化財のようなもの。普通は新作を期待するもの
ですが、島田氏に限っては、BGMはもちろん、シルク1枚の色すら変わって
いて欲しくないと感じてしまいます。 「何も足さない、何も引かない」…
サントリー山崎のCMそのままの感想。その真逆がMr.マリック氏。マニアや
プロマジシャンをも欺く凝った演出は、常にマジック界の最先端を走り続ける
余裕と貫禄を感じさせます。常に新作を期待してしまうし、そのことがまた
エネルギーになっていくのでしょう。その2日後に観たカズ・カタヤマ氏の
ゾンビボールの演技はもはや島田氏の域に達しているかのような名人芸に
感じました。また、神戸で1年振りに観た内田貴光のライブは着実に進化し、
完成度が高くなっています。

やはりウケているマジシャンは自分の長所・短所、あるいは向き不向きを理解
して、徹底的に無駄をそぎ落としている感じがします。つまり客観的に自分を
見れるマジシャンがウケているということです。普通はあれもこれもと詰め込
みたくなるものですが、あえてカットする方が勇気のいることなのです。

先日の内田氏のライブの後、ホテルの私の部屋で、彼と朝まで話込みました。
今回のライブ全体を通して、彼は輝かしい受賞歴には一切触れていませんで
した。彼ほどの経歴があれば自慢げにそれを語るマジシャンが多いものです。
よく考えてみればマジック界の権威ある大会でも、一般人には全く認知されて
いないのです。マジック界最大の大会FISMとは…「マジック界のオリンピック
のようなもので…」と表現されるのですが、断じてオリンピックではないし、
F1は「レース界のオリンピック」とは表現されません。あくまでF1です。
ワールドカップを説明する際に「サッカー界のオリンピック」などありえない
でしょう。世界最大級のマジック大会ですら、オリンピックのようなものと
説明しなければならないほど世間的には知られていないのです。
私は中高生の頃、NHKで世界のマジックショーを見る都度、その優勝者が
なぜ新聞記事に出てないのだろうと疑問に思っていました。
オリンピックのメダリストは一面に掲載されるのに…。

Mr.マリック氏は1972年PCAMハワイ大会での日本人初の優勝者です。
しかしそのことでメジャーになれたのでしょうか? もちろん違います。
歌手の浜崎あゆみが日本レコード大賞を獲ったと自慢するでしょうか?
また大賞を獲ったからメジャーになれたのでしょうか? もちろん違います。

私自身も若かりし頃、コンテストに挑戦して優勝したことを前面に出して自慢
していた時期がありました。今客観的に見るとむなしいことです。
コンテストとは、アマチュアにとっては今の自分の力量がどのレベルにあるの
かを確認するようなもの。プロにとっては肩書きや箔付けの意味合いが濃い
ようですが、賞を獲った時点で満足して成長が止まり、結局マジック道具の
販売や講習会でしか生計を立てられなくなるマジシャンが多い中、数々の賞
を総ナメにした内田貴光が直球勝負でライブに挑んでいる姿は逞しく感じま
した。

一般人から客観的にマジックの世界を見ると、かなり特殊で小さな世界だと
いうことを理解しないと、とんでもない勘違いをしてしまいます。
自慢のために自分が賞を獲った大会を説明しなきゃならないなんて…惨め。


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