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2008年9月

客観的に自分を見る

「私は自分を客観的に見れるんです。」…福田前首相が辞任会見の際に述
べたセリフです。この件に触れた理由は後回しにするとして、この一週間に
観たショーの感想を駆け足で…。(演目の詳細については触れません)

高橋ヒロキの初単独ライブについては、翌日昼食を食べながら本人にも話し
ましたが、彼本人は肩に力が入っていたにも関わらず、グダグダな進行が
いかにも彼らしく予想以上に楽しめて、90分が短く感じました。
テンヨーマジックフェスティバルの島田晴夫氏のアクトは、私にとっては
まさに国宝あるいは無形文化財のようなもの。普通は新作を期待するもの
ですが、島田氏に限っては、BGMはもちろん、シルク1枚の色すら変わって
いて欲しくないと感じてしまいます。 「何も足さない、何も引かない」…
サントリー山崎のCMそのままの感想。その真逆がMr.マリック氏。マニアや
プロマジシャンをも欺く凝った演出は、常にマジック界の最先端を走り続ける
余裕と貫禄を感じさせます。常に新作を期待してしまうし、そのことがまた
エネルギーになっていくのでしょう。その2日後に観たカズ・カタヤマ氏の
ゾンビボールの演技はもはや島田氏の域に達しているかのような名人芸に
感じました。また、神戸で1年振りに観た内田貴光のライブは着実に進化し、
完成度が高くなっています。

やはりウケているマジシャンは自分の長所・短所、あるいは向き不向きを理解
して、徹底的に無駄をそぎ落としている感じがします。つまり客観的に自分を
見れるマジシャンがウケているということです。普通はあれもこれもと詰め込
みたくなるものですが、あえてカットする方が勇気のいることなのです。

先日の内田氏のライブの後、ホテルの私の部屋で、彼と朝まで話込みました。
今回のライブ全体を通して、彼は輝かしい受賞歴には一切触れていませんで
した。彼ほどの経歴があれば自慢げにそれを語るマジシャンが多いものです。
よく考えてみればマジック界の権威ある大会でも、一般人には全く認知されて
いないのです。マジック界最大の大会FISMとは…「マジック界のオリンピック
のようなもので…」と表現されるのですが、断じてオリンピックではないし、
F1は「レース界のオリンピック」とは表現されません。あくまでF1です。
ワールドカップを説明する際に「サッカー界のオリンピック」などありえない
でしょう。世界最大級のマジック大会ですら、オリンピックのようなものと
説明しなければならないほど世間的には知られていないのです。
私は中高生の頃、NHKで世界のマジックショーを見る都度、その優勝者が
なぜ新聞記事に出てないのだろうと疑問に思っていました。
オリンピックのメダリストは一面に掲載されるのに…。

Mr.マリック氏は1972年PCAMハワイ大会での日本人初の優勝者です。
しかしそのことでメジャーになれたのでしょうか? もちろん違います。
歌手の浜崎あゆみが日本レコード大賞を獲ったと自慢するでしょうか?
また大賞を獲ったからメジャーになれたのでしょうか? もちろん違います。

私自身も若かりし頃、コンテストに挑戦して優勝したことを前面に出して自慢
していた時期がありました。今客観的に見るとむなしいことです。
コンテストとは、アマチュアにとっては今の自分の力量がどのレベルにあるの
かを確認するようなもの。プロにとっては肩書きや箔付けの意味合いが濃い
ようですが、賞を獲った時点で満足して成長が止まり、結局マジック道具の
販売や講習会でしか生計を立てられなくなるマジシャンが多い中、数々の賞
を総ナメにした内田貴光が直球勝負でライブに挑んでいる姿は逞しく感じま
した。

一般人から客観的にマジックの世界を見ると、かなり特殊で小さな世界だと
いうことを理解しないと、とんでもない勘違いをしてしまいます。
自慢のために自分が賞を獲った大会を説明しなきゃならないなんて…惨め。


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KEIN 出演情報

KEINのレギュラー出演情報です。

2008年10月から毎週日曜日にテーブルホッピングマジックを行い
ます。

場所 : 唐とん(からとん)
 福岡市南区大橋1−13 東ビル1F  TEL:092−406−1703
時間 : PM7:00〜11:00

※ 現在出演中の中洲屋台横町(TEL : 092−262−0351)は
 基本的に毎週月曜日(PM8:00〜AM0:00)の出演となります。

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トータルバランス

「クロースアップマジックから大掛かりなイリュージョンまで幅広いレパート
リーを誇り…」マジシャンのプロフィールで最も多く見られるフレーズです。
これはジェネラリストとして、あらゆるスケールの仕事を請け負うためには
大変便利な表現方法ですが、全てのレパートリーにおいてクオリティーが
ハイレベルなのかは疑問です。ちょこっと練習したクロースアップに、数羽
の鳩を飼い、手作りのイリュージョンが一台でもあれば冒頭のアピールが
できてしまいます。マジックがショービジネスとして確立していた欧米では、
トッププロの多くはスペシャリストでした。早い時期から自分を客観的に捉
えて、クロースアップ専門のマジシャンや、イリュージョニストへと変貌して
いったのでしょう。

しかし日本では、あらゆるタイプのマジックに手を広げた方が仕事を得やすい
のが現実です。つまりファミリーレストランのメニューのようなものですが、
あえてラーメンや牛丼を載せても、それらの有名専門店の味には勝てない感
が否めません。某マジシャンとの会話の中で、日本のマジシャンは自分にでき
ない(あるいは知らない)マジックを観た時に焦り過ぎだよねという話題にな
りました。新しい技法を見ると焦り…知らない道具を見ればまた焦って欲しく
なり…自分の体型を自覚しないまま、次々に服を買いまくるかのように。
自分の得意分野を確立したトッププロには、そのような焦りはないのでは。
シークフリード&ロイがその地位を築いた後に超困難なカードの技法を練習
していたとは思えないし、タマリッツがいつかホワイトタイガーを出してやろ
うと今さら企んでいるとも考えられません。(企んでいるかも知れませんが)

近年のクロースアップマジックブームで、飲食店を中心に多くのマジシャン達
が現れましたが、ブームが下火になった今、淘汰されないようにという理由
なのかステージやイリュージョンの分野にも手を広げ始めています。全ての
分野においてハイレベルで拡大・維持できれば、まさに豊富な品揃えを誇る
高級デパートのようになれますが、気が付くとコンビニだった…という可能性
の方が大。かようにジェネラリストとしてのトータルバランスを確立するの
は、時間も費用もかかるものですが、最善の方法はまず専門店のような、
どこに出しても恥ずかしくないアクトを完成させてから、他に手を付けていく
やり方かも知れません。国内外を問わずスペシャリストでもそのアクトを演じ
るのはコンベンション等の特別な場合が多く、実際の営業の現場での演目は
似たり寄ったりのようです。

長くなりましたが、ここでお知らせです。
現在の日本のマジック界で最もトータルバランスに優れたマジシャンの一人で
ある内田貴光が、今月神戸でライブを行います。近年はマジックにストーリー
性を持たせた「ドラマジ」という演目に取り組んでいます。
私は昨年5月広島で、彼のデビュー10周年リサイタルの際に拝見しました。
その評価には賛否両論あると思いましたが、すでにカードマニピュレーション
の世界的スペシャリストとしての名声を得た彼が、新たな分野に真摯に取り
組んでいる姿勢は感動的で、一見の価値があります。 フライヤーはこちら


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マジシャンのステータスって?

あるライブでの一場面です。某ジャグラーが、「マジシャンには金さえあれば
なれる」という発言をしました。もちろん笑いのためのジョークであることは
理解できたし、マジシャンが仕掛けを買って頼っている側面がある以上、
ある意味正解なのでしょう。さらにこのジャグラーは、普段からマジシャンを
若干見下す傾向があるという噂を耳にしていたので、その発言を意外とは
思いませんでしたが、マジシャンとしては気分の良いものではありません。
客席には数人のマジシャンが来ているのを知った上での発言なので確信犯
かも知れません。確かにジャグラーは仕掛けに頼らず技術だけで勝負して
いるので、マジシャンをそう決めつけてしまう傾向があるのでしょう。
しかし驚くべきは、その後に登場したマジシャンが、このジャグラーの考えが
正しい事を裏付ける発言をしてしまった事です。
ある演技後、次の道具がなかなか運ばれて来ずに、間が持たなくなった
あげくに「僕は、さっきのジャグラーの○○さんのような話術も無いので間も
持たないし、道具が無なければただの人です。」と言ったのです。
自虐トークで笑いをとるはずが、結果は寂しい失笑…。
これはチケットを買って、わざわざ足を運んだ観客の前で、プロが言うセリフ
とはとても思えません。

日本におけるマジシャンを含めたいわゆる「芸人」の社会的地位は、決して
高いものではありません。私が幼少時代に感じていた、燕尾服に身を包み、
シルクハットを手にしたマジシャンのイメージは気品に溢れていましたが、
成長と共に世間がマジシャンを見るイメージを理解しながらプロ活動を行う
につれ、現実の厳しさを感じたものです。
ジャグラーに女癖が悪いとまでバラされて喜んでいるこのマジシャンを観た
子供達は、マジシャンに気品を感じる時が来るのでしょうか。自虐を売りに
してマジック界全体のステータスを下げるくらいなら、燕尾服で中途半端に
格好つけるのはもうやめて、最初から自虐コメディーマジシャンのキャラを
模索した方がいいのでは。そもそもステータスを下げることで笑わせようと
すること自体が、すでにセンスの無さを露呈しているも同然なのですが…。

このホームページのバイオグラフィーにも記載していますが、私は微力ながら
もマジシャンのステータスの向上にエネルギーを注いだ自負があるだけに、
このマジシャンがジャグラーに白旗をあげた光景は後味の悪いものでした。
小馬鹿にされても付き合いを続けて共演するのは、仕事のおこぼれにあず
かることができるというのが理由の一つなのでしょう。

ところで、この上から目線のジャグラーが最も自慢げに演じていたのは、ラス
ベガスのスタージャグラーとして有名なマイケル・グードゥーの、リンゴ3個
をかじりながらのジャグリングそのままのパクリでした…ラスベガススタイル
のショーと銘打っていましたが、その意味がまさかこのリンゴであるならば…
シャレにもならない。

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9月 ライブ鑑賞

若手マジシャン高橋ヒロキ氏から一枚のチケットが送られてきました。初の
単独ライブを開催するとのこと。タイトルは「INTERACTIVE」
マジックと音楽・映像を融合させた新しい試みだそうです。
また、カズ・カタヤマ氏から特別公演「舞台奇術の宴」にもご招待を
頂きました。彼等とは、Mr.マリック超魔術団公演やテレビ番組等で何度も
共演した仲ですが、そういえば客席からその演技をじっくり観た記憶は無い
ような…今回はぜひ拝見させて頂きます。
さらに今月楽しみなのは、三越劇場で開催されるテンヨーマジックフェスティ
バル。私は10年前の第40回大会に、Mr.マリック氏と共にゲスト出演した
ことがありますが、第50回の今年は、Mr.マリック氏と島田晴夫氏の共演。
私のマジック人生に、最も大きな影響を与えてくれた二人の巨匠のパフォーマ
ンスをしっかりと目に焼き付けてこようと思っています。


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