サブタイトルについて

これまで当お知らせのサブタイトルは「パブリックショーの告知・ニュース
&考察」としていましたが、現在は「パブリックショーの告知」を削除して
います。(誰も気づいていないと思いますが…)

以前から、誰でも観覧できるパブリックな場にはめったに出演することも
なく、あえて告知する内容がほとんどなかったのも理由の一つなのですが、
さらに現在の活動が完全なクローズドの現場に特化されているからです。
それに伴って、マジッククラブ発表会のゲスト出演等のオファーもお断り
しています。
現在の主戦場は、場所も貸切状態の比較的少人数の宴席や、招待客のみの
イベントで演じることがほとんどなので、そのようなプライベートの類の
仕事をここで告知しても意味がありませんからね。

数年前から徐々に派手なステージ&イリュージョンの分野をフェードアウト
して、理想とするクロースアップ&サロンの演目構成に傾注してきました。
ずっと逡巡していましたが、幸か不幸かコロナ禍で改めて自分と向き合う
ことができたことによって、それが加速したということでしょう。
以前にも書きましたが、「ボリューム満点の定食屋」から「完全予約制の懐石
料理店」に業態転換したイメージですかね。
若い頃に作った十八番のアクトを止められずに、生涯それにしがみついた
ままのマジシャンを他山の石としたのも事実です。

万人ウケを排除して顧客層を絞り込んだことで、クロースアップに関しては
自分らしいパッケージが完成して、すでに稼動しています。
あとはサロンの構成…トリネタが決まらない限り他の演目構成を考えていて
も集中できないことが続いていたのですが、ようやく何をどのように演じる
のかという青写真は出来上がりました。
問題はそれをどう具現化するか…どんなに予算がかかっても完成させる価値
がある現象なのですが、さてどうなることやら。

今後は、これまでのスキミング戦略に基づいた活動にさらに注力します。
他人からは地下に潜って隠密活動をしているように見えるかもしれませんが
…間違いありませんね、その通りです。
これまでも周囲の視線など全く気にせずに活動してきたし、自らの年齢を
考慮すると、昔から思い描いてきた「晩年の生き方」を実現するためには、
迷わずに今行動を起こすことが焦眉の急であるし、マジシャンとしての残り
の砂時計の砂は、ここで落としていくことが最善であると判断しました。

魚に例えれば、海水か淡水かは関係なく、今の自分に合う水深と適度な広さ
の中で泳ぎたくなったってことでしょうね。

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NO MORE 時間泥棒 2

前回からの続きです…

「金持ちケンカせず」という言葉がありますが、私を含めてその意味を履き違え
ている人も多いと思います。
つまり、金持ちは欲しいものが何でも手に入るからイライラしないし、争う
必要がない…と解釈しがちなのではないでしょうか。
しかし実際には、そもそも「ケンカになるような人とはつき合っていない」
のです。
つまり、気が合って価値観が同じ人とだけつき合うようにして、人間関係の
ストレスをゼロに近づけるように心がけているわけです。
さらに、「人は人、自分は自分」と肚を据えているからケンカにもならないので
しょう。

ただし、そんなケンカをしない人であっても、つまらない人間に費やして
しまった「時間」だけは、相手の襟首をつかんで「返せ!」と怒鳴っても絶対に
返してもらえません。
貸したお金は戻ってくる可能性はありますが、時間だけは絶対に戻って来な
いのです。

今回は時間泥棒の中でも、私が最も忌み嫌うタイプを…

・ 「虎の威を借る狐」

マジシャンの世界では「師匠ホッピング」を繰り返すタイプに多いので、ある
意味では「虎ホッピング」とも言えるでしょう。(本人の座右の銘かも)
卑屈な笑顔で揉み手をしながら見え透いたお世辞で相手を持ち上げ、実に
まめに貢ぎ物を贈って、なんとか有益な見返りを得ようとします。
そして得るものを得たら露骨に次のステップに移ります。(大抵はホップ→
ステップ→肉離れという結末になります)
なんとか辿り着いた大物と親しいことをひけらかして、目的を成就させよう
とします。(腰巾着にしか見えていないことには気づきません)
威を借る…そんな虎が身近にいるだけでも羨ましいと思う必要はありません。
そもそも実力で虎に認められたわけではなく、必死でゴマすりをして紹介
してもらっただけで、虎の側も都合よく利用することはあっても、内心では
そんな人間をリスペクトはしていません。
いい歳をして虎の威を借りなければ活躍できないような狐は、結果的には
大成しないのです。
そこまで媚びへつらうエネルギーがあるなら、自分が虎になってどこかの
狐に威を貸してやろうという気概が生まれないのが不思議です。
揉み手のし過ぎで、指紋が消えた狐はNO MORE。

他にも時間泥棒をあげれば枚挙にいとまはありません…
・ 「チャレンジ精神がない人」…未来を語れないのでNO MORE
・ 「経歴詐称をする人」…全てに説得力がないのでNO MORE
・ 「ただの輩」…論外

人の振り見て我が振り直せと云われるように、もちろん自分も他人の貴重
な時間を削り取ることには細心の注意を払わなければならないのは言うま
でもありません。

閑話休題…

「時間」の正体を突き詰めると、有限である「命」と切っても切り離せない正に
不即不離の関係にあるのでしょう。
いや「命そのもの」と言っても過言ではありません。
そのことを改めて肝に銘じて、限られた資源である時間をどのように使うか
…朝目覚めた時に少しでも考えてみることで、充実した一日になるかもしれ
ません。

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NO MORE 時間泥棒 1

時間には色も形もなく、空気や水のように流れ行く感覚はあるものの、実体
はありません。
それだけに有限であることを忘れて、つい浪費をしてしまいがち。

こう書くと、おしゃべりは時間の無駄だとか、他人とのつき合いは時間を盗
まれたのも同然だとストイックに考えているのではないかと思われそうです
が、そうではありません。
一見無駄に見えても、のんびりと趣味の腕時計を眺めて寛ぐ時間、愛車と共
に自身を解放するドライブの時間…こういう時間は仕事に費やす時間以上に
貴重な価値を感じることもしばしばだし、気の置けない友人や話がかみ合う
マジシャン仲間と飲んでいると、あっという間に深夜になることも珍しくは
ありません。
こういう時間の使い方はストレス発散にもなるし、新たなアイデアが生まれ
てくることもあるので、「つい時間を忘れるほど」有意義な時間を過ごしたこと
に満足します。

ところで映画館では、「NO MORE 映画泥棒」がお馴染みですが、現在の私の
モットーは「NO MORE 時間泥棒」として、以下のようなタイプとは距離を置く
ように心がけています。

・ 「羨ましがる人」

誰かが成功したり良い思いをすると、「〇〇ちゃんはいいよなあ〜、運がいいん
だよなあ〜」とか「もともと実家が金持ちなんだろうなあ〜」などと素直に喜び
を共有できないタイプ…つまり「嫉妬深い人」とも言えるでしょう。
世の中には不条理なことが多いので、気持ちは理解できないこともないので
すが、羨ましがったところでどうしようもないのに…。
このタイプと飲むと、一晩中暗い愚痴につき合わされるのでNO MORE。

・ 「甘え過ぎる人」

目上や立場が上の人と臆せずにつき合える性格の人は尊重しています。
実際にそんな後輩もいるし、若かりし自分もそんなタイプでした。
甘え上手であれば、「上の人々」から可愛がられたり認められたりすることで、
自力では垣間見ることもできない世界を知ることや、なかなか教えてもらえ
ない仕事上のノウハウも吸収できることは大きなメリットです。
しかし時の経過と共に、目に見えて図々しく甘えるようになり、いつしか
特別扱いされることが当然のような言動や振る舞いをする者も出てきます。
このタイプは自己愛が強く、さらに自己評価も異常に高くて手に負えない
のでNO MORE。

・ 「八方美人」

誰からの声かけでもホイホイとフットワークよく出向くタイプ…つき合い
が良いだけに便利で大事にしなければと思われがちですが、早い話がただ
の八方美人で、知り合いが多いことだけが取り柄で、他人のエピソード
トークを中心に情報屋としての会話に終始し、肝心の本人のポリシーや
哲学などは微塵も感じられない空虚なタイプです。
「あえて敵を作らず誰とでも愛想よくつき合う人は、本当の味方もいない」と
巷間云われますが、それを地で行くような人はNO MORE。

と、今回はここまでにしておきましょう。
次回が最も要注意なタイプです。

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時短生活と倍速消費

巷間、映画やドラマを早送りで観る、いわゆる時短視聴が物議を醸し出して
います。

かなり前に「我ら倍速世代」という記事を読んだ時に「へえ、そんな人達がいる
んだ」くらいの感覚だったのが、今や自分も録画した番組を倍速で観ることが
しばしば…最初は録画しておいたマラソン中継で、デッドヒートが繰り広げら
れる終盤までは倍速で割愛したのを記憶しています。
便利さを知った後は、情報番組や最近のマジック番組も…マジックに関しては
演目を確認するだけなら倍速で充分ですからね。

ただし、感動的な映画に代表されるエモーショナルな作品であれば、荘厳な
音楽やストーリー上で重要な「間」が割愛されて、作品の意図が正しく伝わら
ない恐れもあるし、およそ鑑賞とは程遠い、あらすじだけを紹介するファスト
映画のような違法行為が出てきたりする問題もあります。

倍速視聴は、制作者やアーティストへの冒涜ではないかという意見もあるよう
ですが、旬の作品という情報共有によって人間関係を維持しつつ、長い時間を
費やして内容がつまらなかった時の無駄を回避する、いわゆる時短生活を重視
傾向は止まらないと思います。
これは過剰情報社会という環境上の変化なので、「作品を鑑賞する」行為と情報
収集のための「コンテンツを消費する」ことを両立させるためには仕方がない
ことなのでしょうね。

映像だけではなく、市場に目を向ければ、10分でパスタを完成させる1台9役の
電気鍋や0秒チキンラーメンなど、倍速消費というタイムパフォーマンスの効率
化を目的とした商品が増え続けています。
マジックの世界では、時短修行で「なんちゃってプロ」が粗製乱造された挙句に、
荒波に放り出されて右往左往する傾向も散見されますが…。

何度も書いていますが、私自身も人生を砂時計の砂に例えて、限りある残りの
時間をいかに有意義に過ごすべきかと感傷に浸る時間も大切だとは思うの
ですが、今の時代はゆったりと感傷に浸る間もなく、生活の定型を崩しかね
ない大きなうねりと向き合うしかないのでしょうね。

時短生活でストレスを回避するつもりが、時短によって人間関係が希薄になる
ことがストレスの元凶になるとすれば本末転倒なわけですが、ストレスの最大
の原因は人間関係であることは論を俟たない以上、他人の時間を喰い潰すよう
なマイナス要因しかない人間とつき合うことは、健全な時短生活の潮流に最も
逆行することです。

次回は、距離を置くべき4つのタイプについて具体的に考察します。

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損得勘定の縮図

ここでは政治的なこと、特に政治信条などは書くつもりはないので、昨今の
世界情勢の客観的な考察を…。

米国のペロシ下院議長を始め、相次ぐ高官の台湾訪問が続いて米中の緊張
が高まっていますね。
米国が台湾支援を急ぐのは、ロシアのウクライナ侵攻によって、対中警戒が
一段と増していることが一因なのは明らかでしょう。

その間隙をついて「中立」の国家群の台頭が目立ちます。
つまり米中のどちらにもくみせず、国益に応じて(損得勘定で)組む相手を
変える国家群です。
世界は米欧日などの「西側陣営」と「中ロ陣営」の2極に「中立陣営」を加えた
3極体制に移ったということでしょう。
中立の主な顔ぶれはトルコやインド、南アフリカ、サウジアラビア、ブラジル等
近年国力を伸ばしてきた新興国が多いのですが、その行動基準は民主主義
の価値よりも自国にとって損か得かだけのように見えます。

特にトルコのエルドアン大統領の魑魅魍魎ぶりは突出していますよねえ…
「クルド人テロリストを匿っている」との理由でスウェーデンとフィンランドの
NATO加盟に難癖をつけるわ、自身はNATOのメンバーなのに対ロ制裁に加わ
らないわ、プーチン大統領と経済協力で合意したかと思えば裏ではウクライナ
に軍用ドローンを売るわ、国連と協力して黒海封鎖問題の解決に一役買うわ…
まるで自分が1つの「極」であるかのような振る舞いです。

インドのモディ首相もしたたかですねえ…
インドは中国軍の覇権的な行動を批判して「クアッド」の枠組みで米日豪と
結束しながらも、対ロ制裁には応じずに、ロシアとは友好関係を保とうと
しています。
制裁で輸出先を失ったロシアから安価に資源を輸入できることに加え、国境
で中国と紛争を抱えているために、ここでロシアまで敵に回すわけにはいか
ないからのようです。

中立国は西側と中ロを両天秤にかけて、双方から実利を引き出そうとしている
わけですが、西側としては各国の損得勘定を冷静に読み解いて、なんとしても
世界の秩序維持への支持を得なければならないと思うのですが、難しい状況
ですね。

スケールをうんと小さくすれば、我々の身近な人間関係も似たようなもので、
損得勘定の縮図であることに気づきます…
あいつの考え方や人間性は好きになれないけど、たまに得することもあるし、
このままの距離感でつき合っていこうかなあ…とか、どちらとも等距離を保ち
たいのに、「あいつと俺のどっちにつくんだ?」と二者択一を迫られたら困る
なあ…とか、あの情報を得るまでは揉み手でもしてヨイショを続けるか…とか。

本人は上手く立ち回って実利を得ることにご満悦かもしれませんが、せめて
トルコやインド並みのポリティカルパワーを持った上での振る舞いでないと、
陥穽にはまって、蝙蝠や風見鶏のような人間は、いずれ誰からも相手にされ
なくなるというのは容易に想像がつきます。

国際社会といえども業の深い人間の集合体であることを考えれば、損得勘定
で動いてしまうのは一つの真理なのでしょうね。

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転ばぬ先の杖

新型コロナウイルスの4回目の接種券が届いたことで、改めて還暦を迎えた
のだなあと実感。(接種券は60歳以上に届きます)

無症状であっても濃厚接触者であれば自宅待機となり、社会経済活動が麻痺
してしまう現状は理不尽だとは思います。
コロナ蔓延初期は社会全体がヒステリー気味で、罹患しようものなら非国民
扱いされることもありましたが、今となっては、いつ誰が罹患しても不思議
ではありません。

私自身はというと、まだ罹患はしていませんが、今年1月から8月末までの
8か月間で飛行機の搭乗回数71回、新幹線の乗車回数23回…これだけ動き
回っていれば、戦時下の荒涼とした地雷原で反復横跳びをしたりスキップ
しながら走り抜けているようなもの。
で、4回目の接種を済ませました。
感染そのものは防げないとしても、重症化は免れることができそうなので、
とりあえずは転ばぬ先の杖ということで…。

話題が逸れますが、移動が多くなると、日帰りかあるいは何泊するのかに
よって携行するキャリーバッグやトートバッグのサイズを変えたり、気分
を上げるためにデザインに凝ったりします。
そこで今回新たに購入したのが、フランクミュラーのTOTE BAG Medium
(選択したカラーはグレイ、友人はブラウン)…現在絶賛ヘビロテ中です。

閑話休題…

コロナが理由でマジックの仕事がキャンセルになったり、イベントの企画
自体が消えたり延期になることにはすっかり慣れてしまった感があります
が、年末に決まりかけていた大企業のパーティーの案件が消えた理由は、
なんとロシアによるウクライナ侵攻。
その企業はロシアからアルミニウム等を輸入しているのですが、国際社会
によるロシアへの経済制裁で輸入をストップせざる得なくなり、今後の
業績を考慮するとパーティーどころではなくなってしまったとのこと…
これはもう仕方ありませんね。
小規模なイベントや宴席は主催者のサジ加減というか裁量次第で決行され
ることもあるのですが、グローバルな企業ほど世界情勢に左右されるのだ
なあと、一人のマジシャンとして実感した次第。

リーマンショック、大震災、コロナ禍、戦争…その都度にエンタメは翻弄
され、悲哀を味わい、忸怩たる想いをしてきたからこそ、転ばぬ先の杖を
確保すべくマルチワーカーとして、ハイブリッドな生き方を選択して正解
だったというか…こんな時代だからこそ、それがしっかりと機能している
ことでホッとしているのが正直なところです。

自身をクルマに置き換えて、ガソリンでも電気でも水素でも走れるように
しておけば万全です。
保険に未加入でクルマを運転する人はいないでしょう…人生というクルマ
を運転しているとすれば、多くの特約を組み込んだ手厚い保険に加入する
ことが、転ばぬ先の杖として必須だと思います。
世界情勢が不安定になれば株価は下落しますが、有事の金(ゴールド)として
金価格は上昇するように、可能であれば、投資と同様に一部は逆張りを
しながら収入源のポートフォリオを組むべきです。

我々は災禍に遭う度に、あの時対策をしておけば…と後悔と反省はするの
ですが、喉元過ぎれば…を繰り返してしまいがち。
「起きて欲しくない」という願望が、いつの間にか「起きないだろう」という
楽観的な予測にすり替わってしまうことが一番恐ろしいことなのです。

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マジックと自己表現

以前「ファッションと自己表現」について書きましたが、今回は「マジックと自己
表現について書いてみましょう。

マジシャンは一般人と違って、それが職業であれ趣味であれ、総合力やセンス
の集大成として、最も自己表現を発露しやすい芸能を取り扱っているのだと
思います。
マジックの現象はもの凄いパワーを秘めています…それゆえハマった時には
絶賛されて、スベった時には地獄を見ます。
どんなにお金をかけて衣装に凝ったとしてもテーブルや道具が貧相だったり、
そもそも技術が未熟だったりすると、一気にバランスが崩れてしまいます。

裕福なアマチュアの押入れや倉庫には、衝動買いしたマジック道具が溢れて
います。
自身が何者なのか、そして向き不向きを理解していれば、それらのほとんど
は買わずに済んだのかもしれませんが、あらゆるものに手を出して、次々に
レパートリーを増やすことが自己表現だという考え方もあるし、純粋な道具
コレクターかもしれないし、何よりもこのような顧客がマジックショップの
経営を支えているわけだし…まあこれには正解がないのかもしれません。

「生まれ変わるならこの人になりたい」と思わせるほどの憧れのマジシャンが
いるとしたら、その憧れの人はきっと自らを俯瞰から見ることに長けていて
己が何者でどこが強みかをしっかりと理解し、それがどうすれば観客に伝わ
るかを徹底的に研究し尽くした上で、衣装、メイク、BGM、セリフ、手に
する素材を吟味して完成させたアクトで自己表現をしているはずだし、その
結果、間違いなく稼いでいるはずです。

そりゃあ、上辺だけをコピーしても敵うわけがないのです。
それはサイレントアクトだけではなく、爆笑を生み出すトークでも同様です。
他人のウケている演技に影響されると、本人には全く似つかわしくない毒舌
やブラックジョークを吐いて大火傷するのが関の山だし、そんなマジシャン
を現に何人も見てきました。

コピーする者は、憧れのマジシャンが何故そしてどうやってそこに辿り着い
たのかを理解していないどころか、自身が何者かも理解しないまま、他人の
演技や演出をリスペクトすることなく、あたかもレストランのメニューに
見立てて「今日は何を食べようかな、あれ美味しそうだな」程度にしか思って
いないのです。
そしてパクったギャグを連発しながらコピー道具を嬉々として演じます。

タチが悪いのは演出を盗むことです。
その優れた演出やセリフや使い方に憧れたからこそ、その道具をネットで
探してしまうのです。
その演技を見ていなかったら、興味も示さずに永遠に見過ごしていた道具
だったでしょうに。
そして先人が工夫したことも評価せず、その道具は元々そうやって使うもの
なのだと頭に刷り込まれているのです。

コピーと自己表現は決して繋がることはありません…なぜなら「自己」が欠落
しているからです。

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人生100年時代

少し前になりますが、6月27日の読売新聞に、還暦にして医師に転身した
元農水官僚の記事が載っていました。
以下、記事を要約すると…

還暦で研修医になって67歳の現在は主に訪問診療に従事されており、その
姿はベテランのように見えても経歴はまだ8年目です。
新たな挑戦では自らを律する生活を課し、仕事から帰宅すると必ず午後10時
に寝て午前3時に起き、出勤時間までは勉強に充てる生活を続けました。
医学部受験では学力だけではなく年齢もハードルになるもので、面接では
「医師としてどれだけ働けるのか」、「若い人の芽を摘んでしまうのでは」という
耳の痛い言葉も飛んできたとか。(医師の育成には税金も投入されているし、
医学部には定員もありますからね)
仕事と勉強を両立した5年間で受験した大学は全国で延べ50校!
2010年、55歳にして金沢大学医学部に合格しました。
これからの目標は「生涯現役、100歳まで医師として働くこと」だそうです。

官僚時代は日夜働きづめで、法案審議の国会対応、他省庁との調整…多忙を
極める中で、国を下支えしている自負はあったものの個人として感謝される
ことはなく、「誰かの役に立つ実感」とか「ありがとう」と言われる仕事をした
かった…
というのが転身の理由だとされると、いかにも優等生のインタビュー用の
答のような印象を持ってしまいます。
まさにマジシャンが「お客様に夢と笑顔と感動を届けるために…」と宣うのと
同義のような…。
しかし深読みすると、きちんと本音の部分も吐露されていました…

キャリア官僚はピラミッド型の組織で、若手の頃から50代になった上司が
人事担当者に呼ばれる光景を随所で見かけた。
ある程度の役職まで務めた官僚の多くは、本省を離れて関連機関などに異動
していく。
「行く末が見えているのが嫌だった」。
漠然と50歳を官僚としてのゴールに定めた。

この医師の場合、「行く末が見えているのが嫌だった」というのが転身の本音
のようですが、翻ってプロマジシャンを諦める人は、「行く末が見えないのが
嫌になった」というのが正直なところでしょう。
先輩を観察して10年後の自分を投影した時に「ゾッとする」のは共通だとしても
マジシャンの場合はそれ一本で生きていこうと覚悟した時点で、行く末が
見えないのは自明の理のはず。

後輩の前ではイキリたいのか、稼いでいる雰囲気を醸し出していたのに、
いざコロナ禍ではあたふたする姿をさらけ出す先輩マジシャンにも責任は
ありますが、若手の中にはプロになった後も同世代の同業者にマウントを
かけたいのか、やれ世界大会だ、やれコンテストだと一般社会では知名度
ゼロの世界に大きなエネルギーを費やしながら、実生活では安いギャラで
マジックバーに搾取される生活を続ける人もいるわけで、それに不満がある
ならば、そこにはその道を選択した自己責任もあると思います。

華やかな世界に憧れても堅実さを忘れてはいけません。
以前も書きましたが、「アリとキリギリス」のアリのような堅実さを維持しな
がらも、いざスポットライトの下ではキリギリスのように振る舞うのが
マジシャンの理想像だと思います。

人生100年時代といえども、稼げる実働時間は決して長くはありません。
そこに理想や生き甲斐まで求めるとしたらなおさらです。

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夏の目の保養

ザ・グラン銀座で開催されたFRANCK MULLER 30th Aniversary Exhibition
に招待されたので、7月15日の夕刻に参加してきました。
1992年のブランド創設から30年…もう30年、いやまだ30年としか感じない
のは、100年以上の歴史を誇る老舗が居並ぶスイス高級腕時計の世界の中で
圧倒的に若い後発者なのに、瞬く間にトップグループに名を連ねる存在に
なったからに他なりません。

私が銀座の高級クラブに出演し始めた頃は、客の腕にはパテックフィリップ
やロレックスを目にすることが多かったのですが、次第にトノー型の妖艶な
腕時計をちらほらと見かけるようになり、それがフランクミュラーであるこ
とを知って、チップを貰って有り難がっているこんな自分でも、いつかそれ
を普通に着けられるマジシャンになりたいというモチベーションに火が点い
たことをはっきりと覚えています。

今回のエキシビションでは、通常店頭では見ることのできない限定モデルや
希少モデルなど、様々なラインナップを直に見れて、良い目の保養になりま
した。
高級腕時計メーカーと高級車メーカーがパートナーシップを締結してコラボ
時計を発表することは珍しくはありませんが、今回個人的に気になったのが
ロールスロイス レイス ブラックバッジとコラボした、クレイジーアワーズ
ブラックバッジモデル…フランクミュラー得意のギミック機構を光沢のある
大型のケースで包み、ブルーの差し色が鮮やかな作品で心が揺れました。
しかし350万円という価格はもちろん、セカンドカー購入の予定があるため、
ここはグッと踏み留まりました。
最近の円安とゴールド価格の上昇もあって、ほとんどのモデルで近々大幅な
値上げが予定されているようです。
さて、目の保養の後は担当のMさんとフレンチのフルコース料理を堪能。
憂鬱になるニュースが次々と耳に入ってくる昨今の殺伐とした空気の中で、
こんな一日があると良いリフレッシュになりますね。

偶然にも7月15日の読売新聞には「高級腕時計 好調」との記事が…
コロナ禍で海外旅行や外食の機会が減り、浮いたお金が高額品購入に向かい、
高級腕時計の売り上げが過去最高を更新するだけでなく、平均購入価格帯が
30万円アップして100万円を超えているとのこと。
ビジネスの場で信用の証しとして使われたり、アクセサリー感覚で身に着け
たりと目的も様々なようですが、生産量が限られるうえ、コロナ禍で工場が
一時閉鎖された影響で数年待ちのモデルも少なくないのが現状で、投資対象
としての人気も高まっています。
当然のように値上がりを期待した転売目的で購入する人もいて「正規店では
買いたくても買えない」といった不満も強まっています。
中古価格も上昇し、新品同様なら正規の数倍の価格で買い取るケースもあり、
業界関係者からは「異常な状態だ」との声も聞かれるようです。

この事象は高級車市場も同様で、数年待ちの人気車種は中古価格が新車価格
を凌駕する状態になっています。

高級腕時計や高級車の話題になると必ず「どうせ自慢したいだけだろ!」とか
「そんなもの必要ない!」と言い張るルサンチマンが出てくるものですが、
その意見もあながち間違いではないでしょう。
生きていく上で「なければないでも困らないもの」なのですが、だからこそ
魅力的なのです。
それを頭から否定するのは「主食の米さえあればデザートなんか必要ない!」
と叫んでいるようで、そんな彩りのない人生はちょっと寂しい気がします。

アストンマーティンの最新SUVであるDBX707の特別試乗会の案内が届き
ましたが、残念ながらその日は予定があって参加することができません。
驚いたのは完全予約制で貸切のサーキットで試乗会を開催するということ。
最速、最強、最高のハンドリングを標榜するからこそ、そのポテンシャル
を存分に体感してもらうためにはサーキットが最適なのでしょう。
しかしSUVがサーキットを駆け抜ける…凄いことです。

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真夏の読書

頻繁な移動の最中もできるだけ読書を心がけていますが、この暑さのせいで
疲労が蓄積しているせいか、機中ではウトウトすることも多くなり、読書の
ペースはダウン気味です。
しかしその中でも印象に残った2冊を紹介します。


・ 「NATOの教訓」 グレンコ・アンドリー 著 (PHP新書)

最近の書店の店頭では、ロシアによるウクライナ侵攻がなければ手に取るこ
とも、それどころか出版さえされなかったであろうタイトルの本が多数見受
けられます。
この本もその1冊なのでしょうが、陰謀論よりも現実を直視するスタンスで、
読了した類似の本の中でも極めて冷静な考察が、次の4章に渡ってなされて
います。

第1章 世界最大の平和維持装置
第2章 同盟における妄想と現実
第3章 平和ボケするヨーロッパ諸国
第4章 もし日本がNATOに入ったら

著者はウクライナ出身の国際政治学者で、早稲田大学と京都大学に留学経験
がある知日派です。
それだけにアジア・太平洋方面における政治力学においても造詣が深く、アメ
リカが率いる自由民主主義陣営と中国・ロシアが率いる独裁主義陣営間の
「新冷戦」の構造を明らかにしつつ、日本が学ぶべき国防のあり方にについて
警鐘を鳴らしています。
しかし本書の目的は、読者に「甘い期待」も「無意味な絶望」も与えないとして
います。
であるならば、世界情勢を理解するための必要最低限の情報をまとめた本書
によって、我々が国際情勢の理解と日本の取るべき方針の再構築を考えなけ
ばならないのでしょうね。


・ 「教養としての腕時計選び」 篠田哲生 著 (光文社新書)

本の帯には「どんな腕時計を身につけているか言ってみたまえ。君がどんな人
か言い当ててみせよう」という攻めた一文が…。
これまで多くの腕時計関連本を読みましたが、その内容のほとんどは機械式
時計の歴史や仕組みの解説、クォーツ時計の出現による受難の時代と復興、
有名ブランドの紹介…と似たり寄ったりの総花的なものでした。
もちろんこの本でもこれらの項目は網羅しているのですが、特徴としては
新たな切り口による腕時計の見所と、ここ10年の傾向をアップデートした
内容を、以下の6章で構成しています。

第1章 歴史の裏に時計あり
第2章 時間と時計が人生を豊かにする
第3章 腕時計を買う前に知っておくべきこと
第4章 腕時計の鑑賞学
第5章 時計業界の最新技術
第6章 今買うべき腕時計、30ブランド30選

特に第2章においては、時間の過ごし方=生き方に教訓を与えてくれる時計
は知的好奇心を満たし、人生を豊かにしてくれる存在であるとしています。
そしてクルマの世界でも2000万円を超えるSUV市場が活況を呈していること
を例に挙げて、これらのSUVはハイブランドのファッション×スニーカーの
ようなハイブリッドの楽しさがあるとしています。
昔は、宝飾品や時計や靴は、高級品ほどハレの日やここ一番の時に引っ張り
出していたものですが(今考えてみると貧乏臭い行動です)、現在ではそれらを
普段から身につけてスーパーカーでちょっとそこまで出かける人も増えている
ようです。(結局はガンガン使い倒した方が元も取れるはずなのです)
ラグジュアリーを日常使いするのがトレンドになりつつある…素敵な時代
だと思います。


ザ・グラン銀座においてFRANCK MULLER 30th Aniversary Exhibitionが
開催されます。(7月15日〜17日)
本日招待状が届きました…楽しんできます。

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